そして何より平和が足りない

アサド政権の手によって苦しめられている人たちを救うためにはアサド政権の許可を得なければならない。


シリア 包囲地域で国連の人道支援始まる NHKニュース
シリア政府 包囲地域への人道支援を許可 - BBCニュース
シリア包囲地域に国連が支援物資搬入、政府との協議受け | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
そういえばようやくながら食糧支援の道がなったそうで。

内戦が続くシリアで政府軍や反政府勢力に包囲され、食料が届かず、極めて厳しい状況に置かれている地域に対して、国連は17日、支援物資の搬入を始めましたが、各地で戦闘が激化するなか、支援がどれだけ継続できるかは不透明な状況です。

シリア 包囲地域で国連の人道支援始まる NHKニュース

まぁなんというか、こうして(まさに包囲当事者である)シリア政府の許可がなければ支援できない、という現代国際関係における人道支援問題が苦戦する理由そのものだよね。
国連お墨付きの武力行使なんて出来ない以上、紛争地帯における支援は当事者たちの「許可」を得る以外にない。
アサド政権の手によって苦しめられている人たちを救うためにはアサド政権の許可を得なければならない。まるで冗談のような救えない話。


http://blog.nekotekinews.com/archives/1050200034.html
少し前にも本邦で「シリアではあんなに飢えているのにカレーカツ廃棄なんてけしからん」的なことを言っていた現代版マリーアントワネットかな?*1な愉快な人がいらっしゃいましたけども、まぁそもそも「足りていない」のは食料自体ではなく、それを輸送できるだけの平和状態なんですよね。
――アマルティア・セン先生風に言えば、彼らが飢えるのは単純に食料が足りないからではなくて、適切な食料の「分配」に失敗しているからこそ、彼らは致命的に飢えているんですよ。
まぁそこで無邪気に「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」ばりに「飢えている人がいるのにカレーカツ廃棄するなんて」と繋げちゃう辺り、まさに現代日本社会における貴族階級っぽく愉快な妄言を頻発する彼の彼たる所以でもあるんでしょうけど。


ともあれ、ここ数年来のシリアの件は21世紀の国際関係について、やはり色々と象徴的な意味を持ってしまうのでしょうね。再び、東西両陣営の対立によって安全保障理事会が事実上機能停止する時代が舞い戻ってきつつある。二章にある「内戦は該当国の専権事項」を大前提とすることで生まれる、私たちが信じているはずの平和主義とはかけ離れた致命的な矛盾。冷戦時代のような東西対立による七章の機能不全と、平和的解決を謳った六章平和維持の基本原理によって「当事者の合意が無ければ国連はそもそも動けない」という事実上現状維持しかできなかった無能な国連への回帰。
平和を維持することはできても、取り戻すことはできない。
まぁそんなブルーヘルメットも1988年にノーベル平和賞もらっているので、かの賞のテンプレ通りと言えば身も蓋もありませんが。


「6章半」を唱えた第二代国連事務総長だったダグ・ハマーショルドさんの時代から何も進歩していない私たち。いや、むしろ帰ってきたのかな。上記愉快な現代版マリーが言うように、シリアで飢饉に苦しむ人たちを救うために必要なのが食料だったら話は簡単だったのにね。しかし絶対にそうではない。
彼らに足りないのは食料ではなく、ただただ平和でしかないもの、しかしそれを届けることはほぼ不可能である。あまりにも絶望的な状況に、現代版マリーのようなバカなことを言ってしまうのも仕方ないかもしれませんね。「いや彼は違うだろう」とか言わない。
がんばれ国連。


みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:本来彼女の発言ではない云々というマジレスはここではさて置く。