トランプ旋風はアメリカンドリームの復活か、それとも終わりの始まりか

「これから持つであろう俺たち」の最後のあがき


【米大統領選2016】クルーズ氏、共和党レース撤退 トランプ氏が党候補の見通し - BBCニュース
ということでクルーズさんが撤退だそうで。これで少なくともトランプさんが大統領本選に候補として出ること確実で、いやぁホントもう一体誰がここまでの面白展開を予想していたか。父ルペンさんが仏の決戦投票に出た時もこんな感じだったのだろうなぁ。

トランプ氏は演説で、米国の産業空洞化や失業問題に取り組むと述べ、その原因を作ったのはビル・クリントン元大統領が北米自由貿易協定NAFTA)に署名したからだと批判。外国が米国を再び尊敬するようにすると強調した。
またヒラリー・クリントン氏は「貿易について何も知らない」「偉大な大統領にはならない」などと攻撃を重ねた。さらに、不法移民排斥発言や女性蔑視発言などで自分の支持率が特に低いヒスパニックや女性とも「うまくやっていく」「女性にも支持された。女性に支持されるのは大好きだ」など本選を意識した発言を続けた。

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ともあれ、それでも尚個人的にはトランプさんが勝つとは思えませんが、しかし正しく民主主義に則れば、彼に投票するであろう人たち=共感者たちが一定数以上いることは確実でしょう。
この辺は民主党のサンダースさんと同じで、そういう声があることを示した、という意味は少なくともあるのだろうなぁと。特に貧困層を中心に現状の生活に強い不満を持っている人たち。働く機会がない、働いても報われない生活をどうにかして欲しいという切実な願い。
それがトランプさんか、サンダースさんに行くかは運命の分かれ道。


そもそも論で言えば所謂アメリカンドリーム的な価値観って、単純に「勝者と敗者」が居るのではなくて「成功者と挑戦者」、更に言い直すと「持つ者と、これから持つだろう者」と自分たちを考える価値観であるわけですよ。
そうあるからこそ、アメリカはアメリカで居られる。
これはロバート・B・ライシュ先生のお言葉でありますが、アメリカ人が団結するのに必要なのは過去の共有ではなく未来の共有である、と仰っているんですよね。例えば私たち日本人が団結する際に叫ぶのは右から左まで、基本的には共通の「過去」の出来事からスタートすることが多い。しかし様々な場所からの移民が多いアメリカではそのような共通の過去というレトリックは通用しない。
だからこそ「自分も懸命に働いて成功者になれるかもしれない」という未来に希望を見出す点が彼らには重要で、それがあるから同じアメリカ国民であり、もし共有ができなくなれば国自体が解体してしまうかもしれない。
その意味で、トランプさんの支持層ってこうした古き善きアメリカンドリームを尚も信じている人たち、(あるいは失われつつある)価値観を取り戻そうとしている貧しい白人層の切実な願いでもあるのでしょう。
何故アメリカと較べて欧州のイスラム社会は孤立しがちなのか、に対する答えの一つ - maukitiの日記
先日も少し日記にしましたけど、こうした価値観ってヨーロッパよりも移民同化に適応しているアメリカ、という同化社会のパワーの源泉にもなっているという見方もあったりするわけで。それがあるからこそ、アメリカでは移民を多数受け入れてもヨーロッパほどには失敗しなかった。
こうした構図から見ると、トランプさんって基本的には反移民を叫んでいるようで、実はアメリカの伝統的移民同化手法の保護をも叫んでいてちょっと面白いんですよね。


個人的にはアメリカの『超』格差社会を端から見ていて、正直もうそうしたアメリカンドリームって限界なんじゃないかと思うんですよね。だからこそ一方でアメリカではタブー中のタブーとされてきた「社会主義者」サンダースさんの台頭があるわけで。
ところがだからといって上記アメリカ国民を団結させてきた「未来の共有」という概念が無くなればやはりアメリカという国家の根底の崩壊にまで行ってしまいかねない。


やっぱり彼が勝っても負けてもアメリカの社会にとって大騒動になりそうで、色々な意味でトランプ旋風は面白いなぁと。
みなさんはいかがお考えでしょうか?