孤立主義者にとっての「不都合な真実」

脅威は「海を超えても」やってくる、という教訓。


“真珠湾の言及なし”トランプ氏が批判|日テレNEWS24
普段放言祭りなトランプさんからすると、無論オバマさんへのあてつけでもあるのでしょうけど、実はかなり一貫したこと言っていると逆に感心するお話かなぁと。彼が訴えているような世界からの米軍撤退を訴えるポジションとしては、まさにあの「真珠湾」を非難するのは歴史的経緯としては概ね正しかったりするんですよね。
だってアメリカにとって真珠湾という衝撃があったからこそ、彼らの「平和ボケ」は打ち砕かれ、世界の警察とならんとする準備が整ってしまったわけだから。


一般的に最初にアメリカに――というよりはむしろ「米国大統領」に――世界の警察官としての地位が事実上認められたのは朝鮮戦争からだとされています。1950年に北朝鮮ソ連のに支援されて南進した際、トルーマンは最初にそれまでの慣例通り議会承認を得ようとしていたわけですよ。オバマさんのシリア決議でも話題になりましたけど、そもそもアメリカという国ではまず「戦争を宣言する権限」は議会にあると明確に書かれているように。
しかし当時外交委員長だったトム・コナリー*1は、そんなトルーマンの打診に対して次のように答えたと言われています。
「強盗があなたの家に侵入したわけでしょう? 撃ち殺せばいいじゃないですか。あなたにはそうする権利がある。いちいち警察署まで行って許可を得る必要はないのですよ」
この瞬間からアメリカは『世界の警察』となった。だから宣戦布告なんてしなくてイーのだ。(実際第二次大戦以降アメリカは一度もしてない)


――だからこそオバマさんがすわシリア本格介入というタイミングで、敢えてそれを議会に諮ったことが歴史的に見てもアメリカ(大統領)が『世界の警察官』から降りる第一歩であると言われていたわけですけども、この辺はまた別のお話。


ともあれ、このトム・コナリーに代表されるような上記アメリカ議会の「空気」を生み出したのがあの真珠湾の奇襲攻撃だと言われているんですよね。ポール・スタロビン先生なんかはその様子を次のように述べています。

1930年代、アメリカの議会は第二次世界大戦から距離を置こうとする「孤立主義」の立場をとり、アメリカが防衛面で脆弱だという事実にも目をつぶっていた。政治評論家のフィリップス・ブラッドリーが1937年に述べたように、彼らは「この国は大海原で隔てられているから、事実上、攻撃を受けることはない」と信じていたのだ。しかし日本軍の真珠湾奇襲によって見通しの甘さが露呈した。以降、安全保障戦略が説得力を増し、孤立主義政策は瓦解する。議会は国民の信頼を失っただけでなく、外交問題に対処する自信も失った。*2

真珠湾という現実をアメリカに直面させた日本軍マジ鬼畜。そしてその番犬様の傘に生きる現代の私たち。自作自演かな?
もし日本が空気読んで攻撃しなければ「アメリカは安全」という神話は続いていたのにね。ちなみに『9・11』の時に言われた真珠湾攻撃との類似性って、このアメリ安全神話の崩壊、という点が大きいのでしょう。
ということでやっぱりトランプさんのポジションの人が真珠湾を殊更に恨むのは、天然なのか意図的なのかはともかく、概ね正しい。まさに私たちのやった『真珠湾』あるいは『9・11』が教えてくれる教訓というのは、アメリカが幾ら世界の出来事に他人事でいようとしても、脅威は向こうから容赦なくやってくるという身も蓋もないお話なのだから。




ちなみに当時のアメリカにあった安全神話からの大転換というのは、やっぱり私たち現代日本も他人事ではなくて、もし同じことをされたらそれこそ国民が諸手を挙げて同じような展開になるんじゃないか、とちょっと心配になったりもします。信じられていた安全神話が崩れ去った時にやってくる揺り戻しは、元からその反対派たちの盛り上がりによって大炎上するというのは、まぁ私たちも数年前に見たばかりだしね。


みなさんはいかがお考えでしょうか?