いつものようにセカチューなアメリカが揺れると世界も揺れる

そんなトランプ旋風の裏でほくそえむ人たち。


過熱する米中貿易戦争、中国が次にすべきこと 報復に潜む危険、トランプ大統領の背後の奇妙な同盟を甘く見るな(1/5) | JBpress(日本ビジネスプレス)
面白いお話。上記引用の通り、現在のトランプ=アメリカと対中国をめぐる議論の、隠されている本質という感じかなあ。

きっとそのほとんどが、トランプ氏のアプローチは危険であり逆効果だ、両方が得をする「ウィン・ウィン」ではなく、両方が損をする「ルーズ・ルーズ」に終わる、と答えるだろう。

 しかし、それは表向きの回答だ。

 舞台裏に回れば、多国間貿易体制と自由貿易を熱心に擁護する彼らは、中国に「立ち向かう」人物の登場に一定の満足感を覚えていると認めるだろう。

過熱する米中貿易戦争、中国が次にすべきこと 報復に潜む危険、トランプ大統領の背後の奇妙な同盟を甘く見るな(1/5) | JBpress(日本ビジネスプレス

僕もこの争いは誰も得しないと解っていながら、しかし内心「いいぞもっとやれ」とちょっと思ってます。ザ・混乱ラバー。
2国間の貿易交渉開始で合意、トランプ氏が表明 日米首脳会談 (写真=AP) :日本経済新聞
関税含む日米交渉開始で合意 交渉中は関税引き上げ回避 | NHKニュース
特にその嵐から一歩離れて見ていられるならば尚更。本邦内でも賛否両論激しい安倍政権ではありますが、対米関係については(個人的には脱デフレ政策に次ぐ)功績といってもいいと思ってます。もちろん最良だとは言えないものの、他国と比較して相対的に見ればトランプさんから上手い距離感を取っている方でしょう。近すぎず離れすぎず、歴史的によくあるアメリカ発の大混沌を少なくとも現状は上手く回避している。*1


現代世界における(アメリカ以外の)各国為政者にとって、おそらく最も重視すべき外交資質について。
いかにしてアメリカの手による予測不可能な嵐を乗り切れるか?


アメリカという国家について議論するとき、しばしば重要な大前提とされているのが、まさに今見ているような「アメリカが揺れると世界が揺れる」という点なんですよね。
現下のトランプ政権の暴走について、それはまぁ世界中で批難轟轟となっている。しかし、実際にはこうしたアメリカ発の激動が歴史的に珍しい事態かというとそんなことない。いやむしろ、アメリカが世界一の大国となった以後、常に世界はアメリカの都合によって振り回されてきたと言っても過言ではない。アメリカが世界の中心だというのは、喜ぶべきか悲しむべきか、概ね正しい。
前任者のオバマさんのレッドライン詐欺によってその後のシリアの命運が決まったように。あるいは子ブッシュさんの一国主義なイラク侵攻のように。日本も他人事ではない、あの唐突なニクソン訪中で大混乱に陥ったように。二度とアジアで戦争しないと言いながらベトナムの泥沼にはまっていったように。朝鮮半島は防衛圏外であると言いながら朝鮮半島で戦ったように。


といってもまぁこうした大転換・政策変更・暴走(何て呼ぶかは自身のポジションによって好きにすればいいとして)というのは、特に政権交代が日常的にある民主国家ではごくありふれた光景でもある。本邦でもセイケンコウタイで色々あったよね。
――ただその当たり前も、アメリカは世界で最も大きな力を持つ国であるが故に、必然の帰結としてはその行動の余波もまた世界で最も大きくなる。
アメリカが(世界の予想に反する形で)大決定・政策転換をすることで世界がヤバい、というのは絶対に今に始まったお話じゃないんですよ。そしてアメリカという国家の歴史を見れば解るように、しばしば、このすばらしい国家は民主主義に則って国内的にも国外的にもぶっ飛んだことをやらかす。これでこそアメリカである。禁酒法孤立主義、反共産運動、反戦運動対テロ戦争etcetc。だからトランプさんの『暴走』ですら、ぶっちゃければいつものアメリカと言うことすらできるんですよね。
しかし、そんな混乱こそがやがて世界の次なる常態を決めていく。


はたしてこのトランプさんの手による大混乱は、あるいはいつものアメリカ発の大混乱は、次の世界をどのように規定していくのでしょうね。
みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:まぁ左右の両端からは「アメリカのいいなりだ!」と怒るんでしょうけど。でもアメリカに大きな顔どころか、建前ならともかく「いいなりにならない」実質的な対等関係ですら生み出せる国なんて世界のどこを探してもあるはずないのにね。そして、その立場に中国が挑戦している(少なくとも一部分では成功しつつある)からこそ、現時点でのトゥキディデスの罠が懸念される国際関係が生まれている。