されど新興勢力は旧勢力を嗤う

僕たち日本はついていけるだろうか、この東アジアの変化のスピードに。




「韓国のようなちっぽけな国がむかつく」香港事態が呼んだ中国の嫌韓 | Joongang Ilbo | 中央日報
これはただミクロな国民感情の一時の発露というだけでなく、マクロな国際関係における「新興勢力の台頭」によって生まれる摩擦、な象徴的光景っぽくて面白いなあと。

この映像はウェイボーで31回リツイートされ、合計147件のコメントがつけられた。ほとんどが「済州島(チェジュド)でも独立させろ」「ちっぽけな国がどれほどむかつくか。なぜあんなに多くの女優が自殺するのかわかる。骨の髄まで憎悪心であふれているからだろう」「本当に笑わせる国だ」など韓国人を皮肉る内容だった。

15日にも同様の映像がウェイボーに上げられた。高麗大学のある学生が中国人留学生と言い争いをする場面だった。コメントは険悪だった。一部中国人ネットユーザーは「21世紀にも依然として(米国の)植民地である、韓中日の中で序列最下位の国が自尊心だけは一等」「自国の軍隊の指揮権もないのに民族の尊厳を強調する世界で最もおかしな国」として嫌韓感情をそのまま吐き出した。

「韓国のようなちっぽけな国がむかつく」香港事態が呼んだ中国の嫌韓 | Joongang Ilbo | 中央日報

「むかつく!」というのはまぁ説明不要な、ある意味議論の余地のない、率直な感情ではありますよね。
この構図としてはでは中国→韓国ですけども、本邦では少し前までは嫌韓ネトウヨ扱いされても文句は言えない構図ではあります。
それをこうした中韓でやっているというのはこちらも時代は変わっただなあとしみじみ思ってしまうところ。実際こうして当事者ではない、第三者からの立場として見るとなんともコメントし難い構図でしょう。
同じ日本人のそれならば「そんな事は(仮に内心で思っていても)口にすべきではない」と諫めることはできるものの、では中国の人たちにもそれを言えるかというと……うーん、まぁ、多文化共生バンザイ!


それこそこうした中国人たちの物言いを「ネトウヨ的」発言と見ることもできますけども、
中国主席「覇権の夢ない」 米への挑戦否定:時事ドットコム
しかしあちら側から見れば、まさに中国政府が公的な発言としてこれまでも述べてきたような、不当に蔑まれてきたことへの反発でもあるわけでしょう。

習主席はこの中で「われわれは誰かに取って代わろうと準備しているわけではない。ただ、あるべき尊厳や地位を回復し、過去の半植民地国家の屈辱を再び味わいたくないだけだ」と、米国の覇権に挑戦する意図がないことを強調した。

中国主席「覇権の夢ない」 米への挑戦否定:時事ドットコム

本来あるべき(中国が上である)立場としては、韓国の振る舞いは許せない、なんて。
まぁこの理屈には――同意するかはともかくとして――一理あるとは思うんですよね。
経済成長を遂げた韓国が日本に対してそう思ったように、中国もまた韓国に。あるいは西洋列強諸国に追いつこうとしたかつての日本のように。
これまでも時代の変化によって延々と繰り返されてきた、国家間の相対的地位の変化について。


こうした自己価値についての「認知」や「尊厳」を求める性向こそ、人間がただの経済的動物ではないことの証明でもあるわけで。
アリストテレスに言わせれば物理的満足ではない精神的満足としてのテューモス=「気概」であると。
個人がそうであるということは、つまり国家も。
上記のような発言を見れば中国政府の行動原理ってつまりそういうことでしょう。
承認欲求によく似た何か。そうしたモノから完全に切り離せている、という人なんて私たちの身の回りを振り返ってみても現実にはほとんどいない。いや、むしろ少なくとも一定以上の繁栄を実現したこの日本社会であればこそ、そうした承認欲求を満たさんとする発言や行為が溢れまくっているとすら言えるかもしれない。
――インターネットなんてその主戦場の一つだよね。
もう10年近くダラダラと続けてきた、このブログだってそういう気持ちがまったく無い、とは絶対に言えない。




ここでは、あくまで「個人の感想」という構図ではありますけども、やはり少なからず国家間の『空気』を反映していると思うんですよね。
そうした意識の変化ができるだけ穏和に進めばいい。しかしそれが両者の感情的衝突が避けられないほどに強い反発となってしまったら?



当事者である日本の私たちにとっては大きく扱われがちな、本邦でのネトウヨな人たちへの反韓感情な「日本と韓国」の比較がなされることが少なくないわけですけども、世界的に見ればその両者のパワーの相対的変化ってぶっちゃけ大したことのない・あまり興味の無い問題だろうとは思うんですよね。
日韓関係のパワーバランスが多少変わったところで、それ以上の広がりをもつわけではない。
ところが「中国との相対差」になると話は致命的に変わってくることになる。
その関わるプレイヤーの多さとしても、またその影響力の大きさとしても。


中国のこうした「あるべき尊厳や地位」の回復によって世界はどのように変わっていくだろうか?
最初のニュースのような、韓国の大学内での中韓大学生の争いってその変化の一端だとは思うんですよね。
中韓で生まれる「あるべき尊厳や地位」についての両者の認識の差異、その最前線の一つとして。


みなさんはいかがお考えでしょうか?