『平等の四騎士』には全然なれそうにない新型コロナウイルス

「俺のコロナの威力がおかしいって弱すぎって意味だよな?」



世界の10富豪、パンデミック中に資産増加 「人類全体のワクチンが買える額」=NGO - BBCニュース
先週のニュースではありますけども、2021年という現代世界についてこれ以上ないほどよく表しているお話だと思うんですよね。

世界では昨年、感染症対策として各国がロックダウンを導入したことにより、デジタルサービスの需要が高まったため、テクノロジー大手の売り上げや株価が大きく伸びた。

これにより、ベゾス氏をはじめとする富豪の収入ではなく、保有する不動産や株式といった資産の価値が上昇した。

報告によると、ベゾス氏の資産額は昨年3月から9月の間に急激に増加。アマゾンの全社員87万6000人に10万5000ドルずつボーナスを支給してもまだ、パンデミック前と同レベルの資産が残るという。

世界の10富豪、パンデミック中に資産増加 「人類全体のワクチンが買える額」=NGO - BBCニュース

「人類全体のワクチンが買える額」て。コロナでむしろ豊かになっている人たち。
うーん、やっぱ不平等ってクソやな!
やっぱ格差是正という正義がナンバーワン!


……でもどうやって?


ということでこの格差拡大抑制ネタで思い出すのは、数年前に一大ブームを巻き起こしたトマ・ピケティ先生は『21世紀の資本』だったりするんですよね。
ちなみに彼は資本主義の歴史(ほぼ民主主義政治の歴史でもある)において、ほぼ常に格差は拡大してきたものの、それが反転したのが1914~1945年の二回の世界大戦の時期だったと述べているわけで。
やっぱり「希望は戦争」だったんや! 
『響け! グンクツノアシオト』上映開始まったなし!


――とふざけてみても、極悪独裁者ヒトラーアベもいなくなってしまった以上、今の日本で直近で大規模戦争が起こる可能性はあまり高くないでしょう。
なので別の選択肢を探す必要がある。
ここで考えるヒントになりそうなのは、ウォルター・シャイデル先生の『暴力と不平等の人類史』あたりでしょうか。
人類は「破壊」でしか平等化できないのか | 外交・国際政治 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
ちなみに彼はその著書の中で世界大戦だけでなく他の三つを合わせて、「不平等を打破するほどの衝撃を社会に与える」モノは四つあると述べているんですよね。

有史以来、最も力強い平等化は最も力強い衝撃の帰結であるのが常だった。不平等を是正してきた暴力的破壊には4つの種類がある。すなわち、大量動員戦争、変革的革命、国家の破綻、致死的伝染病の大流行だ。

これらを「平等化の四騎士」と呼ぶことにしよう。聖書に登場する四騎士と同じく、これらの四騎士は「地上から平和を奪い取り」「剣によって、飢餓によって、死によって、地上の獣によって人間を殺す」ために現れた。

四騎士は、時には1人ずつ、時には互いに手を組んで行動し、同時代の人々にとってはこの世の終わりとしか言えないような結果をもたらした。彼らが現れた後、何億もの人々が非業の死を遂げた。混乱が収まるころには、持てる者と持たざる者の格差は縮んでいた──時には劇的に 。

人類は「破壊」でしか平等化できないのか | 外交・国際政治 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

大量動員戦争、変革的革命、国家の破綻、致死的伝染病でしか人類社会は不平等を解消することができなかったと。
いやあ人類に絶望するしかなくなってしまう悲観的な指摘であります。


「人類全体のワクチンが買える額」というニュースが証明しているように、今回のコロナという騎士では死者の数の桁が足りなかった。

一方、貧困層がコロナ禍による経済的困窮から回復するには10年以上かかるとされている。オックスファムは、2020年にはこれまでと比べて2億~5億人が新たに貧困に陥ったとみており、過去20年にわたって縮小してきた世界の貧困が増加に転じたと指摘している。

世界の10富豪、パンデミック中に資産増加 「人類全体のワクチンが買える額」=NGO - BBCニュース

結局苦しんでいるのは、貧困層だけっていうね。
いや、それでも、全員が全員苦しんでいないだけマシなのかもしれない。
しかしそれは同時に、致命的な衝撃が起きなったせいでやはり富豪たちの資産価値が上昇し格差が拡大するという展開を招いているんですけど。
世界の富豪の資産、コロナ禍で27%増 過去最高の10兆ドル超に - BBCニュース
巨大IT企業、コロナ禍の中で業績好調 米公聴会では追及 - BBCニュース
結局のところ、コロナ「ごとき」では現代世界のスーパーセレブたちの資産を減らすことはできなかった。
端的に言って、コロナは『平等の四騎士』失格であります。
むしろ富裕層を利してさえいる。




  • はたして私たちは、格差拡大のトレンドを反転させるために、貧困層だけでなく富裕層の財産や生活を根こそぎ破壊することで実現される平等、それをもたしてきた『平等化の四騎士』の再度の到来を望むべきなのだろうか?
  • それとも、これまでのように、何か不平等な世界を一変させるようなすばらしいアイディアを見つけることに期待しながら、富豪たちの膨らみ続ける莫大な資産を眺め続けるべきなのだろうか?


もちろん後者が実現できればそれでいい、というのはベストな解答であるのは間違いないでしょう。
そんなの誰にでもわかるよね。
しかし、前者の人類史が証明しているのは、つまるところ私たちの手で決定的な平等化を実現するというのは、それだけ社会に大きな衝撃が起こすという意味でもある。。
その衝撃とは、今私たちが目にしているような「新型コロナウイルスパンデミック」ですら、おそらく、足りない。
今のコロナ以上の変化を私たち自身の手で実現することが可能なのだろうか?


『平等の四騎士』か『見果てぬ夢』か。
いやあどちらが先にやってくるんでしょうねえ。
それがもたらす変化と混沌という意味では、ぶっちゃけどちらも変わらないんじゃないかと僕は戦々恐々してしまうんですけど。
どちらがやってくるにしても、今のコロナ以上になるのは間違いない。


コロナによる社会の変化を味わった今だからこそ、更にその意味が解ってしまうという、皮肉でおっそろしい話だよね。
不平等是正を心の底から望む私たちは、今のコロナ以上の衝撃に耐えられることができるのだろうか。


みなさんはいかがお考えでしょうか?