中国に足元を見られている私たち

世界経済でもコロナでも気候変動でも核なき世界でも、リベラルな国際協調主義を人質に取られている世界。


中国主席、「冷戦思考」やめるよう呼び掛け-ダボス会議で演説 - Bloomberg
「お前がそれを言うのか」というマジレスはさて置くとして、しかし言っていることには一定の説得力があると思うんですよね。

  習主席は世界経済フォーラム(WEF)がオンライン開催した「ダボスアジェンダ」会議で演説し、「優位性にコミットし続けるのではなく」、国際法と国際的なルールにコミットし続けることが極めて重要だと述べ、「対立はわれわれを袋小路に陥れる」と指摘。新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)からの回復を助けるべく再び互いを尊重し合うよう訴えた。バイデン米政権発足後、習主席が演説するのは初めて。

  習主席は「小さなサークルをつくって新たな冷戦を開始することや、他者を拒絶し脅迫すること、意図的に分離や供給の混乱、または制裁を強いること、孤立または疎外を生み出すことは、世界を分断させ、さらには対立にさえ追いやるだけだ」と語った。

中国主席、「冷戦思考」やめるよう呼び掛け-ダボス会議で演説 - Bloomberg

この習近平国家主席の言葉って、中国脅威論を叫んでいた一部ネトウヨへの批判や、アメリカンファーストな自国第一主義を叫ぶトランプを批判していた主張と、ほとんどそのまんまじゃないですか。


世界でいちばんリベラルきぎょうさま - maukitiの日記
この辺の愉快で歪な光景については、先日の日記でも少し書きましたけども、

ここで中国共産党政府に対して口汚く罵ったところで何も解決しない、というのはその通りなんですよ。
ただ「悪いことをしているぞ!」と批判して解決するなら話は簡単だったのにね。でも絶対にそうではない。
いや、むしろ、批判することでより問題が悪化してしまう可能性だってある。中国と対立するより、協力関係を築くべきである。頭のおかしい一部反中ネトウヨを除けば、実際に2010年代の半ばまではそういう論調が主流トレンドだったのも間違いないでしょう。
そうやって中国が経済発展を遂げるまで様子を見ておけば『責任あるステークホルダー』になってくれるかもしれない。
更には民主化までワンチャンあるでこれ!

世界でいちばんリベラルきぎょうさま - maukitiの日記

現在の中国は、少し前までのリベラルな国際協調主義を謳っていた人びとと、ほとんど同じことを言っている。
だからこれは何も中国特有の二枚舌な態度や主張というだけじゃないんですよね。

「小さなサークルをつくって新たな冷戦を開始することや、他者を拒絶し脅迫すること、意図的に分離や供給の混乱、または制裁を強いること、孤立または疎外を生み出すことは、世界を分断させ、さらには対立にさえ追いやるだけだ」

中国主席、「冷戦思考」やめるよう呼び掛け-ダボス会議で演説 - Bloomberg

習近平はそんな国際協調主義的な言葉をほとんどそのまま繰り返しているだけ。


……ところが今の状況と言えば、まぁご覧の有様ですよ。
いやあ世界が逆転しているようでクッソ面白い光景だよねえ。


ここで、だったらさっさと中国への批判を強めればいいじゃないか、と方向転換をすれば話が終わるかというとそうではないのが更に面白い所でもありまして。
つまり、かつてのリベラルな私たちが言っていて、且つ今それと同じ言葉を使っている中国の主張というのは、現在でもそれなりに正しい主張であることも間違いないでしょう。
世界規模の問題を解決するためには、分断や対立関係ではなく、お互いに尊重し協力していくことが重要なのは議論の余地などない。
コロナでも、
気候変動でも、
軍縮問題でも。
やっぱり国際協調主義がナンバーワン!




条約発効の影響は、批准国を縛る法的拘束力だけにとどまりません。核保有国は政治的、経済的、社会的な圧力に包囲されることになります。

核はもはや使えぬ兵器 ICAN川崎氏「安保論は亡霊」[核といのちを考える]:朝日新聞デジタル

おっ、サンキューICAN! 
やっぱ、圧力こそが世界を変えるんやな!
(お気に入りのフレーズなので最近使いまくっている)


世界経済を低迷させないために、
核戦争を回避し核軍縮を実現するために、
気候変動問題で世界全体で協調した行動を採るために、
コロナ禍においてワクチンをより世界全体で平等に供給するために、
「我々の国家主権を侵すような内政干渉をしないで欲しい」と圧力をやめるように中国に丁寧に要求されたら――反中ネトウヨ・あるいはドラゴンバスターな人たちはあっさり無下に拒否すればいいとしても――リベラルな私たちは一体どのような態度を採ればいいのでしょうね?


圧力と協調を上手く使い分ければいいのかな?
そんなことができる能力と権限を兼ね備えた叡智ある政治家って、どこの世界の屏風の中にいるのかな?





基本的価値観の相違を前提に内政干渉を嫌う中国は、まず間違いなくそうした『譲歩』をリベラルな私たちにこそ求めてくることは間違いない。
中国のやっていることに目を瞑りながら協調関係を続けるのか、それとも協調関係を破綻させる覚悟を持って彼らのジェノサイドを批判するのか。
グレタさん、緊急行動求める 気候目標は「不十分」:時事ドットコム
グレタさんのような子供はそんなジレンマ無視していればそれでいいんですよ。
――しかし、そんな緊急事態だからこそ、足元を見て利益を上げようとする人たちも必ず存在している。
それこそ私たちのミクロな個人的に生活においても、コロナに便乗したマスクの高額転売をするような人たちを散々目にしてきたように。
EU、ワクチンの域外輸出を規制強化へ 加盟国への納入が減少 - BBCニュース
ワクチンを独り占めにしようとする裕福な国家たちが後を絶たないように。


互いに尊重しあう=こちらの国内問題に口を出さないで欲しい、という合理的な要求をする中国やロシアたち。

新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)からの回復を助けるべく再び互いを尊重し合うよう訴えた。

中国主席、「冷戦思考」やめるよう呼び掛け-ダボス会議で演説 - Bloomberg

ぶっちゃけ大きな声で言えないだけで、そう思っている国のほうが多いんじゃないかな。
現実世界に生きている大人の私たちはその要求(脅迫)を安易に無視することなんて絶対にできない。


賢く合理的な中国から、リベラルな国際協調主義を人質に取られている世界について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?