「職業に貴賤はない」と貴方がたは言うけれど、

それって賤が「無いことになっている」だけじゃないの???



アマゾン配送員、飲料ボトルに排尿せざるを得ないことも 同社が認め謝罪 - BBCニュース
先日の通常日記でも少し言及したアマゾン従業員のボトラー疑惑のお話をもう少しだけ。

するとアマゾンは直後に「ボトルに排尿するなんてことを本当に信じているわけじゃないですよね? もしそれが本当なら、誰ひとり私たちのために働かないだろう」と反応した。

アマゾン配送員、飲料ボトルに排尿せざるを得ないことも 同社が認め謝罪 - BBCニュース

この反論が二重の意味で墓穴を掘っていて、あまりにも見事すぎるザ・「語るに落ちてる」感あってすごい好きなんですよねえ。
誰も働かないよ、と自分が考えている職場で実は働かせている、という邪悪さ。
名探偵の誘導尋問でうっかり自白しちゃうバカな犯人役なのかな?



「普通の人間ならば(ここ重要)、そのような劣悪な職場環境で働くことはあり得ない=故にアマゾンでもそんなことはありえない」という無邪気な確信。
そんな風に強い言葉で反論するものだから、いざボトラー労働が真実だと明らかになってしまったとき、ただのウソや隠蔽以上の傲岸さと無神経さからくる社会の『断絶』の見せてしまっている。

ポカーン議員は3日、アマゾンの謝罪を拒否し、「はぁ。これは私をめぐる問題ではなく、あなた方が十分な敬意と尊厳をもって接していない従業員をめぐる問題なんだ。まず、すべての労働者に不適切な労働環境を与えていることを認め、次にみんなのためにその問題を解決し、最後に、労働者が会社から妨害を受けることなく労組を結成できるようにしてください」とツイートした。

アマゾン配送員、飲料ボトルに排尿せざるを得ないことも 同社が認め謝罪 - BBCニュース

この問題を告発していた議員が「あなた方が十分な敬意と尊厳をもって接していない従業員をめぐる問題」と言っていたのは、まぁその通りなんですよね。
重要なのは、トイレが使えないことそれ自体じゃないんですよ。
自らが図らずも自白しているように「もしそれが本当なら、誰ひとり私たちのために働かないだろう」と言いながらも、実際にはそれで長年働いてきた人たちの存在しているという事実。
つまりそれって、そのような環境で働いている人たちのことがまったく見えていなかった、考慮していなかったということに他ならないわけで。



そんな人間扱いされない使い捨ての労働者という構図というのはそこれそアマゾンに限らず、私たち日本のブラック企業や実習生制度のアレコレ、もちろん世界中にありふれている光景でもありますけど。
『見えない人間』を見る気のない人間 - maukitiの日記
この辺は以前も日記ネタにしたことがあって、つまるところラルフ・エリソンの『見えない人間』のそれと同じ構造にあるのでしょう。

ラルフ・エリソンが『見えない人間』の中で述べているのは、何も直接的な侮蔑ではなくて、そうした無関心の極致にあるような態度こそが被差別な立場にある人びとの尊厳を傷つけている、ということなんですよね。
アメリカ北部にあった黒人への人種差別の極致とは、黒人を無いものとして扱う白人たちの態度である、と。
不当な扱いをすることだけが差別ではなく、そもそも同じ人間だとみなされていないことこそが。

『見えない人間』を見る気のない人間 - maukitiの日記

やっぱり上記の最初にも書いたアマゾンの反論って、『見えない人間』扱いされているアマゾンドライバー、という構図についてこれ以上ないほど見事に語るに落ちている発言だと思うんですよねえ。
アメリカ版平田オリザ
日本のアレも、アメリカのコレも、もう社会分断を煽るためにワザとやってるんじゃなかって思うレベルの。


ということで巨大企業にまともに人間扱いされずに働かされる彼ら彼女らは、自らへの敬意と尊厳と取り戻すために働いてくれるだろう政治家たちに投票することになる。
黒人の権利をきちんと守ってくれるだろう政治家に投票したあの時のように。
アングル:バイデン陣営に食い込む巨大IT企業、「追及」に備え | ロイター
……一体だれが?
おれたちには、トランプしかないんだ! だから、これがいちばんいいんだ! - maukitiの日記
もしかして:トランプ



敬意と尊厳が与えられないまま働かされる人たちと、まるでそんな人間扱いされない職場環境など存在しないかのように振る舞う人たちによって生まれる断絶。
現代社会の縮図のような今回のボトラー騒動なお話について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?