中小国政治の悲劇

気候変動が大事というなら、アメリカや中国やインドやロシアの行動を変えてあげればいいのに。


スウェーデンの首相が辞意表明 総選挙で右派に敗北 - BBCニュース
スウェーデンでの選挙でも極右が台頭してしまったそうで。
首相も「もう無理」...反移民が燃え上がる「寛容の国」スウェーデンで極右政党が躍進|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
まぁ割と一部界隈では移民難民政策の失敗事例の典型として挙げられるほどの様相を見せているので、この躍進が意外かというとそうではないよねえ。一方でお隣の陽キャ首相のフィンランドではヨーロッパが熱狂していた間にも割と厳しい移民受け入れ政策を採ってきたこともあって、この問題とは切り離されているのは同じ『北欧』と言っても一筋縄ではないのが見えて面白い所ではあるんですけど。


グレタ・トゥンベリさん、スウェーデン議会選を批判 気候変動の議論不十分 写真15枚 国際ニュース:AFPBB News
ともあれ、スウェーデンといえば我らがグレタ・トゥンベリさんよなぁ、と思い出して調べてみたら、相変わらず元気そうにやっているので安心しました。

 トゥンベリさんはこの日、首都ストックホルム中心部で大勢の人々とデモに参加した。

「私が抗議しているのは、投票するだけでは不十分だからだ」とトゥンベリさん。政治家は十分な気候変動対策を講じていないと批判し、「今のところ、行動を起こしている政党はない」と話した。

 トゥンベリさんは今年初めて選挙権を得たが、どの党に投票するかはまだ決めていないという。

 一方で、有権者は自分の懸念を表明することが重要だと強調。「私たちは気候や環境の緊急事態に関心を持っており、これからまた4年間、何もしない政治家を許すつもりはないことを政治家に示すためだ」と話した。(c)AFP

グレタ・トゥンベリさん、スウェーデン議会選を批判 気候変動の議論不十分 写真15枚 国際ニュース:AFPBB News

むしろ相変わらずすぎて成長していない……といういつもの光景感も。


以前からずっと書いてきているお話でもありますけども、ぶっちゃけスウェーデンを筆頭に世界から見たらヨーロッパは確実に「気候や環境の緊急事態に関心を持っている」方なのは間違いないわけですよ。
もちろんそれが何の瑕疵もない完璧な対応だとは絶対に言えませんけども、しかし世界的に見たら最も政策が進んでいることも間違いない。
ここで導かれるのは、つまるところ現状のヨーロッパの進退というのは今更もうそこまで重要ではない、という点なんですよね。
むしろアメリカや中国やインドなどを筆頭に、これからよりエネルギーの消費を増やしていくだろう発展途上国などの動向こそが重要なんですよ。だからむしろ批判すべきなのはそうした国々であり、そこでスウェーデンの政治家を責めるのは正直可哀想だよなぁと同情してしまうんですよね。
それこそ世界で最もうまくやっている方なのに。
グレタさんに対して「中国に言え()」というのはまぁよくある揶揄ではありますけども、ただの冷笑にとどまらずもう一歩進んで考えるのであれば、何故私たちは中国やインドの行動を変えられないのか、という点こそを考えるべきでしょう。。
各国政府の行動が不可欠…気候変動対策を「企業に頼るのは現実的ではない」 | Business Insider Japan
国際関係論が好きな僕は、国際協定に関する専門家でもあるスコット・バレット先生などの話を前提に議論していくべきだとは思いますけども。上記でも『政府の規制』と『拘束力のある国際協定』こそが重要であると仰っているんですけども、では先を行くヨーロッパ以外の国に一体どうやってそれを守らせればいいのか?



もちろんグレタさんの「今のところ、行動を起こしている政党はない」という発言の中身が、そのまま「スウェーデンの政治家は、外交でアメリカや中国やインドなどの行動を変えられていない」という点あれば、同意できなくもないんですけども。
――でも、ぶっちゃけ、敢えて強い言葉を使うならば、スウェーデン『如き』にそんなことできる???
いくらその行動が不合理であろうとも、中小国という立場ではそんな大国の行動を変えることには限界があるのは、国際関係に疎い私たちだって少し考えれば解かるお話でしょう。
それはアメリカや中国やロシアに囲まれている本邦ではより一層身近な問題でもありますよね。米軍基地や北方領土領海侵入などで、本邦でも似たような主張をする人は少なくないのでやっぱりグレタさんだけが特別にイノセントという訳では絶対にないんでしょうけど。
あるいはスウェーデン一国では無理でも、国連や国際機関が協力すればワンチャンあるかもしれない!
ロシアに原発占拠をやめることなど求める決議採択 IAEA理事会 | NHK | ウクライナ情勢
NPT再検討会議 ロシアの反対で「最終文書」採択できず | NHK | ロシア
……あっ、ふ~ん。
まぁこんなこと、2022年に生きる私たちにとっては、ロシアのウクライナ侵攻をまったく『話し合い()』でまったく止めることができなかった現在の国際関係を見ればイヤでも理解できてしまうお話ではありますよね。


プーチン氏はウクライナ侵攻を間違いだと思っていない=ドイツ首相 - BBCニュース
ロシアの戦争を話し合いで止めることと、気候変動問題で協力すること、一体どちらが簡単だろうか? なんて。


幸か不幸かそれは、現代国際関係における最重要のテーマの一つでもあります。
ここで良いニュースなのは、気候変動問題はそれらの問題とまったく根を同一にしているのでロシアや中国の行動を止められるような画期的解決案が見つかるのであれば、同様に気候変動問題も解決に向かう可能性が高い。
しかし同時に悪いニュースなのは、それら不合理な大国の行動*1の問題にそもそも解決の糸口すら見えておらず、むしろ状況は悪化しているまである。
なんもかんも、バカな大国の行動を止められない中小国の無力さが悪いんや、というと身も蓋もありませんけど。


そのパワーバランスが逆だったら話は死ぬほど簡単だったんですよ。しかし、そうではない場合には、その解決は未だ人類未踏の地平でもある。
大国の行動を変えられない、中小国政治の悲劇について。
みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:ここで更に根本的な問題となるのは、「合理的」「不合理」の基準は各々のポジションによって決まる、という『文明の衝突』のような価値観の問題でもあるわけで。