悲しい近代化

ロシアのモスクワ地下鉄爆弾テロのあれ。
モスクワの地下鉄、女2人の自爆と判明 死者34人に 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2010032900443
おっそろしい話です。こんなの完全に防ぐのは事実上不可能ですよね。
大抵の場合彼らは、男性よりも女性の方が怪しまれないという理由で女性を自爆させる。それまで女性を宗教の名の下に抑圧してきたのに。合理的に考えて、そちらの方が有利だと考えたから。それまでは否定してきた、合理的に考えて女性を社会で働かせたほうが有利であるという事を無視して。


イスラム世界の、特に経済的後進性の理由の一つに、女性の社会参加の低さを指摘するものがある。イスラム教がハードルとなって、女性の諸権利が認められていない、だからこそ近代化が遅れているのだと。勿論全てのイスラム教国がそうではなく、私たちと変わらないような国だってある。しかし逆に女性の働く権利が無いような国もある。
しかし彼らはテロリズムの手法において、女性を、(ある意味で)働かせることを選択した。西欧による道徳や社会通念の押し付けではなく、彼ら自身の選択の結果によって。つまり近代化によって、それまで信じられていたものに変わって、実証主義や合理主義が彼らの中で幅をきかせるようになった。私たちと同じように。
そしてその挙句が効率の面を良く考えた、女性を使っての、地下鉄のような密集市街地での、暴力的なテロリズムによる、手段に至った。確かにこれは悲しい話ではあるけれど、私たちが信奉する合理性の一面ではある。


彼らはその意味で確かに一部近代化している。神学的あるいは形而上学的な話ではなく、科学的で合理的でそして(かつてと較べれば)男女平等な思考をもって。よく欧米批判の一つとしてある、一部の人が忌避するような西欧による押し付け、ではない彼ら自身の方法で近代化に至ろうとしている。まぁ手段はともかく、根本の目的は真逆でさえあるんだけど。
むしろこういう時にこそ聞くべきなのかもしれない、「近代化って本当に幸福なんですか?」と。