民主主義故に分裂するものたち2

八方塞なイスラエルさんちの苦悩のお話。


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 中東和平を仲介するアメリカ、ロシア、EU(欧州連合)国連の「中東和平4者協議」が出した声明も楽観視する材料にはならない。確かに声明は「当事者間で交渉して得られた解決策により、67年に始まった占領に終止符が打たれ、独立した民主的な一つの国家として存続しうるパレスチナ国家が平和かつ安全にイスラエルなど周辺国と共存していくこと」を求めている。だがこの4者は過去に何度も同じような声明を出したことがあるのに、努力が実った試しはない。

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そんな身も蓋もない。ともあれ現状を見る限り、イスラエルの行く先は暗い未来しか見えない、という意見には確かに頷くしかない。さすがスティーブン・ウォルトさんは良い事言います。


しかしまぁ悲しくなるのは、

 たとえネタニヤフがもっと協力的な姿勢を採りたいと考えていたとしても、大幅な譲歩など連立相手の政党が許してはくれないだろう。

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な辺りですよね。つまり、もし例えイスラエルに賢明な政治指導者が現れたとしても、しかしそれは政治的に失敗する。連立相手やあるいは一部の有権者たちの反発によって。
少なくともイスラエルはそれなりに民主主義国家なのだから。そうした人びとの声を「無視して」強硬に宥和政策を行うことさえできない。
といっても別にそうしたことは特に珍しくもない。私たちの愛する民主主義は、楽観的な人からすれば「たまに」悲観的な人からすれば「しばしば」、人びとの間にある分裂とその固定化を助長する。イギリスとアイルランドや、あるいはキプロスギリシャ系住民とトルコ系住民や、旧ユーゴスラビアなんて自由選挙と同時に分裂が加速したとさえいえる。で、どれも結局血が流れる羽目になったと。
その意味でイスラエル政府の瑕疵ばかり責めるのはあまり公平ではない。彼らは基本的には有権者の望む事しかできないのだから。


そんな「民主主義国家」なイスラエルは、文中にあるようなアメリカ型の融和社会をめざせるかというと、もうそれも無理かもしれない。少なくとも時間と共にそうした事へのハードルは上がっている。アメリカのような宗教的自由を一般に広く認めた融和社会の実現は無理であると。というか現状のアメリカでさえ苦労してる*1のに、より緊張度の高いイスラエルでなんて。
更に致命的なのがそれは単純に、現状イスラエルユダヤ人の人口とパレスチナ人の人口の差は、最早ほぼ逆転されているから。そこで選挙したらほぼ間違いなく普通にパレスチナ人の首相が誕生する。それをイスラエルユダヤ人たちが許容できるかというと、多分ないから。*2
そうした事を考えると、行き着く先にある答えがアパルトヘイト国家であると。
やっぱりスティーブン・ウォルトさんの言う様に「暗すぎる予測」しか見えない。



さて置き、アメリカ型ではなくて「ヨーロッパや日本のような政教分離」型だって方法としてはあるんですよね。公的な場所での宗教を一切排除する事によって、全てに公平な宗教的自由を実現しようとする試み。
そこら中にエルサレムとか嘆きの壁とか岩のドームとかあるのに、しかし公に宗教的行為の禁止がされる社会。
やばいすごいシュール。

*1:よくある代理戦争の構図 - maukitiの日記

*2:その意味で、パレスチナ側からのテロ行為(とイスラエルの報復の連鎖)は在外ユダヤ人たちを遠ざけている=人口減という点で、悲しいことに長期的に成果を挙げている。同時にそれは問題の長期固定化をも招いてもいるんだけど。