ティーパーティーのアブナイ外交政策 | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
まぁいつものニューズウィークさんらしいと言えばそうなんですけど*1、結論としては結構面白い話だとは思うんですよね、毎度のことながら過程はともかくとして。
ここテキサス州選出の共和党保守派のロン・ポール下院議員は、米外交専門誌フォーリン・ポリシーで1つの外交方針をぶち上げた。イラクとアフガニスタンでの戦争を終わらせることが、ティーパーティーに繁栄をもたらすというものだ。
ティーパーティーのアブナイ外交政策 | アメリカ | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
ポールいわく「諸外国との交流は民間レベルに任せ、政府は介入しないという伝統的なアメリカの外交政策に立ち戻る。それが我々の道徳面・財政面での健全さを取り戻す唯一の手段だ」
これはティーパーティーの基本的信条と一致する。彼らの主張とは、政府は国民の生活に口出しすべきでない、財政支出を減らしてこれ以上増税するなというもの。だが外交政策となると、ティーパーティーの意見は一枚岩ではない。
まぁ概ねその通りなんでしょう。まさに引用先でも言及されているように、ティーパーティの人びとは伝統的なアメリカ像、つまりアメリカ合衆国憲法を信奉しているからこそこうした主張に帰結する。それは「権限の分散」と「抑制と均衡」こそが国家権力を制御する為の最善の手段であると信じている。だからこそ「反・大きな政府」なわけだし。
その意味で、ニューズウィークさんの言う「アブナイ外交政策」という結論は正しい。
何故なら、伝統的なアメリカ流の国家権力の「権限の分散」と「抑制と均衡」というのはとどのつまり、議会と大統領による主導権争いという均衡状態を意味しているから。故に半ば必然的に外交政策も当然混乱してしまう。で、「アメリカ政府の外交政策には一貫性がない」なんて内外からまた言われてしまうと。
でも別にそれって珍しい話ではないんですよね。ぶっちゃけアメリカの外交政策って以前の冷戦時代を除けば、ほとんど常に、混乱常態だったし一貫性などなかった。むしろかつての「対共産主義陣営」な時期こそが例外だった。
オバマ大統領だって少し前にアフガニスタンで現地司令官と揉めたことがあったばっかりだし*2、前のブッシュさんの時だってパウエル国務長官が内部的な対立によって辞任したりした。
だから今回のニューズウィークさんの言うような、まるでティーパーティーの人たちが馬鹿だから外交政策が危ない、というような見方はあんまりフェアではないと思うんです。確かにこのまま中間選挙で共和党が勝利すればほぼ間違いなく外交政策は混乱するんでしょう。でもティーパーティー云々関係なしに、混乱すること自体はこれまで幾度も繰り返されてきた、ほぼ規定路線です。
それは歴代の政権で幾度となく繰り返されてきた、大統領と議会多数派の支配政党がそれぞれ違う事態、といういつものよくあるお話でしかない。
アメリカの外交政策ってずっとそうして、良く言えば均衡されてきたし、悪く言えば混乱してきた*3。冷戦時代のごく一時期を除いて*4。
そうしてオバマ大統領が就任時に言われたような意欲的な外交政策は、そんな均衡(混乱)状態によって当然失敗しつつあるし、ブッシュさんの時だって似たようなものだった。
それを「均衡」と呼ぶのか「混乱」と呼ぶのかは、結局の所、それぞれのポジションの違いでしかないですよね。
ティーパーティーの人びとの理念的に言えば、かつてのジョン・クインシー・アダムズ*5が語ったような現実主義的な「利権と陰謀が渦巻く戦争には、そこから抜け出す力がない限り介入すべきでない」なことを信じているんでしょう。だからこそオバマさんのそれは均衡されるべきだと。
で、反対にニューズウィークさんのポジションとしては例の如くそれを「ティーパーティーのアブナイ外交政策」と呼ぶと。
そんな現実主義やリベラルや新保守主義や孤立主義だとかもう色々ありすぎて、いつだって一貫性がないと言われるような、アメリカの外交政策のお話でした。