国連とWTO、なぜ差が着いたのか、

……慢心、環境の違い


http://www.asahi.com/business/update/1224/TKY201012240484.html

 【ワシントン=尾形聡彦】米通商代表部(USTR)は23日、中国が世界貿易機関WTO)の協定を順守しているかどうかをまとめた年次報告書を米議会に提出した。レアアース(希土類)の輸出制限についても、必要があれば、WTO提訴する姿勢を示している。

http://www.asahi.com/business/update/1224/TKY201012240484.html

アメリカが「WTOに提訴する」と中国へ威圧しているそうです。
この構図で面白いのは、少し前に北朝鮮の砲撃問題で韓国は「国連安保理に付託する」のを諦めたのに、しかしアメリカはWTOに提訴というカードを切る辺りですよね。しばしば単独行動主義と批判されるアメリカでさえも、それなりにWTOの紛争解決機関が機能することを了解している。
最近のうちの日記*1でちょくちょく機能を停止しつつある国連安保理を皮肉っていましたけど、だからといって、(大国間の利害衝突が構造的に避けられない)国際機関が全て同じように機能しないわけでは当然ないんですよね。このWTOのような数少ない例外のように。


WTOの紛争処理手続きは、もちろん現在でも批判されている欠陥要素は結構あって、例えば救済の履行問題や違反是正の実効性だとか。
しかし、それでも「それなりに」その紛争解決手続きは、これまでかなりの面まで機能してきたのもまた事実ではあるんですよね。よく国連などの国際的機関の無力性を言われている中では例外的に。
そしてその力の根本にあるのは「内政に干渉し得る」という要素にあると。究極的には違反した国には、相応の罰金を支払わせる、という合意の下に。
だからこそ、アメリカは「WTOに提訴する」なんてことを言っている。あの無力な国連安保理と違って完全に単なるポジショントークや手続き上の問題だけではなく、それなりには、解決能力があると思っているから。その一つであるセーフガード協定なんかはそれなりに執行力のある、まともな抑止力になっているとアメリカさえも認めるところであるから。


改革に失敗し再び機能を停止しつつある国連安保理と、そして苦しみながらもその機能を維持しているWTO
「それなりに」機能している国際紛争解決機関の成功例。WTOって地味にすごいですよね。国連さんも是非見習ってくれるといいですよね、でも一体何を? というお話でした。