世界が逆に回転する-イスラエル編-

前回の続編。というよりもむしろこれまで書いてきたことから想定される、中東に広がる民主化の問題の本題。
世界が逆に回転する-エジプト編- - maukitiの日記
エジプトをはじめとした広義の『民主化』がそこに広まる事によって、しかし逆に包囲されていくイスラエルさんちの家庭の事情。


「駐在国にムバラク支援を働きかけよ」、イスラエルが自国の外交官に通達 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
当初から言われていたそんなイスラエルさんの悲しい努力は、
時事ドットコム:「イスラエルとの平和条約破棄」=新政権主導へ意欲−エジプト・ムスリム同胞団
結局こういう所に行き着く。なんて悲しいお話でしょう。


前回日記の終わりでも少し書きましたけど、エジプトの脱欧米あるいは民主化って、最終的にこういう所に行き着くんですよね。でもそれってかなり自明の話ではあります。だから当初欧米をはじめとする偉い人たちは苦い顔をしていたわけで。以前から中東諸国が民主化すれば必然的に反欧米な政権が誕生する、なんて言われていたものの、しかしそれよりももっと直近に問題になる話が存在するから。
つまり、中東の民主化はこれまで独裁政権によって(皮肉にも)抑えられてきた反イスラエル感情が爆発することになる。
その意味で多くの人がなんとなく中東の民主化独裁政権打倒ドミノなんて言ってますけど、それと同時にほぼ確実にやって来るのが、かつての中東戦争時代にあった「イスラエル包囲網」が復活するというお話だと考えられているんですよね。しかも更に救えないことに、それは「民意」の名の下に。


それはトルコやレバノンでもう起きた事でもあるし、またシリアやヨルダンでも今後起こり得る可能性の話です。皮肉なことに(これまでの反動も含め)独裁政権下よりも更に激しくその感情は燃え上がることになる。これにエジプトを含めればまさにイスラエルの全周包囲網の完成です。民主化のドミノではなくて、反イスラエルのドミノが。でもそれは新しい状況なんかではなくて、前回のキャンプ・デービッド合意以前の状況が蘇ってくる事でしかない。悪夢のような中東戦争をやっていたあの頃に。1978年以前に。おかえりなさいイスラエル
中東の国々はそうした悪夢のような状況をイランの革命から学んでいて、故にイスラム過激原理主義色の強い国家運営から距離を置こうとしていた。といっても別にそれはイスラエルのことを気遣って云々というよりも単純に自らの為に。


上記時事通信の話は、全てが真実ではないにしても、実際ある程度までは真実だと言えるでしょう。まさに彼らは自らの政権維持の為にイスラエルに対してより強硬的な態度を採らざるを得ない。前政権とは違うという自らの政権の正当性を証明する為に。だってそれが民衆の望んでいる事なんだから。イスラエルの横暴を許さないと。故にそこに是非などない。
イスラエル自身もその内部の強硬派によって妥協が許されないのと同じように。


ということでやっぱり余所者である私たちには祈る事しか出来ない。世界が平和でありますように、と。