これまでと同じ理由で放置されつつあるリビア

これまでカダフィさんが放置されてきた理由と、これからリビアが放置される理由が同一なものなのは、なんというか皮肉な構図ですよね。ということで何となく角度見えてきたリビアのお話。


英仏、リビア飛行禁止空域設定で安保理決議案提出へ 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

カダフィ政権側の空爆を阻止するための飛行禁止空域の設定について、英仏は西側諸国の中で最も前向きだ。一方、米国は「実現可能性を検討中」と述べるにとどめている。(c)AFP/Pierre-Antoine Donnet

英仏、リビア飛行禁止空域設定で安保理決議案提出へ 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

といっても幾ら英仏ががんばったところで、もし仮に安保理決議無しの『多国籍軍』という体を選択したとしても、アメリカさんに動いてもらわなきゃどうしようもないですよね。かつてのコソボでも、あるいはかつてのイラクでも、飛行禁止空域でも経済制裁でもアメリカが主体となって、むしろ私たちはそのほとんど全ての実際の役割をアメリカに押し付けて満足していたわけだから。*1
なんかこのリビアと欧州の構図って、北朝鮮問題にもっと関わって欲しい日本の悲しい思いに通じるものが感じられて親近感がもてます。それはリビアにしても北朝鮮にしても、すぐ隣にある私たちにとってはかなり重要な問題ではあるんだけれど、アメリカにとっては遠く離れた問題でしかないと。
結局の所、アメリカにとってリビアに関わる事に最早、戦略的な意味が無くなってしまったから。


まぁそりゃそうですよね。ぶっちゃけてしまえばリビアにあるのは石油しかない。最近のリビア関連のニュースによく出てくるグーグルマップとか見てても思いましたけど、リビアすごいですよね、びっくりする位砂漠しかない。そりゃ人口が少ない上に、統一された政府がこれまで成り立たなかったのも頷けます。
そんなリビアを支える理由、あるいはカダフィさんを見逃してきた理由って、ただその一点でしかない。つまるところ「(リビアの持つものの中で)一番重要な石油が安定供給されるか否か」という点。
そして最早、原油価格の高騰は始まってしまった。
つまりリビアに早期介入する意味がなくなっちゃったんですよね。だって最早石油高騰の流れは始まってしまったわけだから。そしてその埋め合わせに関しては既に合意もできていると*2。ならば今すぐにリビア情勢に介入する理由なんて何もないではないか、とアメリカさんが考えるのも無理はないお話ではあります。リビアなんかよりもずっと重要なバーレーンもやばいのに、リビアなんかに構っていられないという事情も多分あるんでしょう。まさにあそこは対イランの最前線なわけだから。
ついでにリベラルな人道的・民主化的な見地からも言えば、「他国への『介入主義』はどの基準で用いられるべきなのか?」という冷戦以後からの命題*3に未だ明確な答えを見出せていないから。「確かにカダフィさんは自国民を空爆しまくった、けどそれってまだセーフじゃない?」というお話は、まぁ批判されそうな議論だけども、しかし事実でもあるんですよね。


こうして、かつてのカダフィさんの独裁体制の放置と、そして今内戦状態に陥りつつあるリビアの放置が、同じ理由に求められてしまう。そんな「最早どうでもいい」という同じ結論に達してしまうのはリビアという国家の、地政学的・戦略的な意味のなさに求められてしまうのは悲しいお話ではありますよね。
だからといって、国際社会の私たちはリビアの内戦が放置されるのを大きな声で非難する事なんてできない。何故なら同じ理由で、カダフィさんの独裁を放置してきたのだから。
がんばれリビア

*1:逆説的に、だからアメリカ以外の人々はアメリカの『単独主義』を止められない、という議論もあったりする。

*2:リビア原油輸出、停止時はサウジ増産で埋め合わせ=米EIA高官| Reuters

*3:コソボだったり、ソマリアだったり、イラクだったり