国連さんちの最後の大勝負

先日思いがけず色々コメントを頂いたので、もう少しだけ考えてみた国連さんちの家庭の事情のお話。
前回これは国連にとっては小さな一歩だが云々 - maukitiの日記


まぁしかし現状の国際連合の欠陥なんてものは、そんな平和維持活動における『中立』や『公平』の概念なんてものを殊更に持ち出すまでもなく、今更過ぎる話ではあるんですよね。
よくネタにされていた話ではありますけど、かつての『国連人権委員会*1』なんて、2003年にはリビアがその議長国だったりしたわけで。ちなみにその少し前の2001年にはアメリカと入れ替わる形でシリアがその委員会の議席についていた。
そんな彼らの国がやっていた「言論の自由、拷問、食糧確保の権利、教育の権利」を扱う『国連人権委員会』なんて。その時も両国の首脳は今となっては非難されまくりでおなじみのカダフィさんやアサドさんでした。当時でさえアレでしたけど、いやもうほんと現在のリビアやシリアの状況を考えると、ギャグでやってるのかと笑うしかないですよね。
そんな経験もあって、あまりにも「中立性」を重視しすぎて斜め下に行き過ぎた状況を打破する為に2006年には『国連人権理事会』として出直すこととなったわけです。そこでは絶対的な中立主義を脱却して、それなりに人権状況が「公平な国」こそが理事に選ばれるようになった。


上記の試みからも解るように、現在の国際連合の持つ欠陥の多くが、あまりにも中立であろうとした為に結果として何もできなくなっているんですよね。
それは8年前のイラク戦争でもそうだったわけです。結果的にアメリカが単独主義を止めることも、かといって逆に容認し制御することもできなかった。国連はあの時も文字通りに『中立』であり、そしてぶっちゃければ、何もしなかった。
本来ならばそうした国際的な集団行動に正統性を付与・あるいは奪うことこそが、国連に求められている機能であるはずなのに。


その意味からすると、今回のリビアへの介入はそれなりに成功例として挙げるべきなんでしょう。国連の決議によって、それなりの正統性を付与することに成功した。
しかしこの成功って、言ってみればあの国連軍が唯一出動した「朝鮮戦争」の例と同じ事例だと思うんですよね。安保理協議から離脱するというミスをソ連が犯したおかげで実現したあれと。
つまるところ、当時のソ連と同様に、今回のリビアでも中国やロシアなどの彼らの見通しの甘さが招いた幸運な成功例に過ぎないと思うんです。運良く(そして最初の一回目だったからこそ*2)成功しただけでしかないのだと。
そしてその結果がこんな風になってしまうならば尚更ですよね。
カダフィ政権崩壊後のリビア原油権益、イタリアなど反体制派の支持国が有利に| ワールド| Reuters
リビア:反体制派「中露の原油利権排除」 積極的な支援なく - 毎日jp(毎日新聞)
こうした動きによって中露がより軟化するという楽観など勿論なくて、むしろほぼ確実に彼らの態度を硬化させるのでしょう。一度目の失敗から学んだ「もう安易に武力介入を認めるような決議には絶対賛成しない」という決意によって。


ということで、今回の動きもこうした国連改革の大きな流れの一部ではあるんでしょう。
まぁそれが将来、失敗するのか成功するのか、なんてとても僕には解りません。でももしこれに失敗するとしたら、それは現状の人類が「単一の世界機構」とやらを運用する能力がないことが再び明白になってしまうんだと思うんですよね。1920年から試みてきた国際平和を目指す国際機関は、結局の所、失敗に終わるのだと。まぁリアリズムな人からすると当然の結末ではあるんでしょうけど。
次に来るとしたら『超国家主義』辺りでしょうか。それはそれで確かに進歩の一種なのかもしれないですよね。難度はどう見ても上がってますけど。まさかの欧州連合大勝利フラグ。