大英帝国は遠くなりにけり

イギリスさんちと移民のお話。


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ということで某メルケルショック*1からいつのまにかその潮流が変わってきた感があります欧州『移民』問題ではあります。まぁこの辺のことはいい加減うちの日記でも散々書いてきたのでさて置くとして、面白かったのは以下の部分。

■しかし先の労働党政権はそれとは逆に、議論を煽ってきた。移民に反対するのは人種差別だとでも言うように議論そのものから目を背けた閣僚もいれば、自身の保守派としてのイメージを守ろうと躍起になって反移民を叫びながら、移民削減へ向けて何一つ具体的な行動を起こさなかった閣僚もいる。

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これは卓見だなぁと思います。キャメロンさんかっこいい。
実際の所やっぱり移民問題ってよくある失敗、つまり議論を怠ってきたことこそが、こうした現状を招くことになったのではないのかと。下手に人権という概念が絡んできてしまうからこそ、利益を元にした合理的な判断に失敗してしまう。反対する奴はレイシストで、賛成する奴は売国奴、なんて事が普通に煽られてきた。いやぁめんどくさいお話ですよね。


実際上記引用先でも触れられているように、「移民受け入れ」というやり方は勿論デメリットもあるんだけれども、しかしそれでも同時にかなりのメリットをもたらすやり方でもあります。それこそ19世紀後半から大英帝国という超大国をイギリスが作り上げた要素の一つはやっぱりそんな、イギリス本国からの移民と植民地からの移民、という圧倒的人口の持つパワーこそがそれを成立させた一端でもあるから。
だからイギリスってある意味で、アメリカと同じ位移民で最も成功した国だったんですよね。まぁその頃から現在と同じような批判もされていたんだけど。



そんなイギリスだから、あるいはだからこそ、健全な議論に失敗してしまった。賛成派も反対派も議論そのものを避けてきてしまった。あるいはただ表面上の議論のみを煽ってきてしまった。
勿論それはそれで勢いだけの「いけいけどんどん」なやり方も時には必要ではあるんだけれども、しかし長期的に維持するのは難しいわけで。やっぱり(集団全体の利益になる形で)長期的に維持していくことこそが、将来に渡って『移民』という問題と上手く付き合っていける正しい方法なんだと思います。社会制度の維持と、出生率の問題やあるいは単純労働力の確保の問題を勘案した上で、一義的に賛成するのでも反対するのでもなくて、上手く舵取りをする必要こそが。

こうした両極端な主張をただし、分別ある理論的な議論を展開することが、政治家の役割だ。

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ええ、まさにその通りでございます。当たり前過ぎるお話ではあるんですけど耳が痛い。政治家がんばれ。
感情はもちろん大事なんだけど、しかしそこに利害が加わわってこそ、長期的にそのシステムを維持していくことができるのだから。


しかし(移民によった)過去の栄光を持つイギリスがこうした姿勢を明確にするのは、やはりある意味で象徴的ではありますよね。