もう後には引けない人びと

ヨーロッパさんちのいつか来た道、なお話。


Europe’s return to Westphalia - FT.com
「ウェストファリアに回帰するヨーロッパ」ですって。面白いこと言いますなぁ。
以前の日記でも少し触れましたけど、現在の欧州連合のような『超国家体制』だったのって別に今だけがそうだったわけでは決してないんですよね。それは新教対旧教な宗教連合であったし、あるいはハプスブルグさんちのような血による超国家的な体制が現実に存在していたわけであります。あの1648年のウェストファリア条約以前には、むしろそれが当たり前だった。
しかしそんな脱国家的な体制は「あまりにも容易に他国からの干渉を招いてしまう」いう反省のもとに否定され、そしてその後のお互いに内戦不干渉を原則とするウェストファリアな近代国際体制へと繋がるわけであります。そんなバランスオブパワーは二回の大戦によって見事に失敗してしまうわけですけど。


ローマとパリの両条約から60年。こうして再び『超国家体制』への疑念が高まりつつあるわけであります。それはかつてと良く似た「他者の都合に振り回され過ぎる」という当然の嫌悪感によって。
しかしまぁそうは言っても、今更引き返せないんですよね。
もう彼らは60年以上そのゴールに向けて歩き続けてきた。そのポイントオブノーリターンが何時だったのか、51年か57年か65年か92年か07年か、正確に何時だったのかは解りませんけど、どちらにしてももうそれは通り過ぎてしまった。


だから彼らが自主的に統合を諦める可能性があるのかというと、ほとんどないと思うんですよね。今度のブリュッセル会議で例えシェンゲン協定を諦めたとしても、しかしそれは一時的な後退でしかない。それは彼らがその選択の正しさを信じているから、という理由よりももっと単純に「もう今更引き返せないから」というよくある理由によって。
だってこれまでの長年の努力を無に返すには、60年は長すぎます。