前略ましてや帝国ですらない

善意による覇権でも、孤立主義でも、ましてや帝国ですらない。そんなアメリカさんちの家庭の事情。


米軍予算の削減のしかたbyジョセフ・ナイ : 地政学を英国で学んだ
おなじみ『地政学を英国で学んだ』様より。

●イギリスの歴史家であるニアル・ファーガソンは熱心な帝国主義者として知られているが、彼はイラク戦争開始当時に、アメリカは三つの国内の赤字のおかげで帝国的な役割を果たせないと言っていた。
●それは、1,兵隊の数、2,国民の支持、3、財政、の三つの赤字である。
アメリカがイギリスの帝国と決定的に違ったのは、帝国主義にかける意志が欠けた政治文化なのだ。

米軍予算の削減のしかたbyジョセフ・ナイ : 地政学を英国で学んだ

まぁそんなもんですよね。
実際よくアメリカのことを「帝国主義だ!」なんて揶揄する人がちらほらいらっしゃるわけですけども、一部のアレな人たちはともかく、多くのアメリカ国民にとって基本的には「遠く離れた土地に軍隊を派遣するなんて金の無駄だ」と考えているわけで。
それは軍事費よりも福祉に金を使うべきと考えている左派な人たちであるし、そして伝統的な右派である彼らの大好き小さな政府信奉者でもあるし、どちらにしても彼らは基本的には軍隊に金を掛けるのは馬鹿らしいと思っている。そんな人びとが帝国主義的な事業に賛成するかというとやっぱりかなり怪しい。その意味で彼らはやっぱり「帝国主義にかける意志が欠けた政治文化」であると。
アメリカは『正常』に戻るのか? - maukitiの日記
以前の日記でも書きましたけど、アメリカ国民にとっての伝統的な本来あるべき『正常』とはかなりの部分が、そうした孤立主義的な対外政策に回帰することでもやっぱりあるわけだから。
アメリカのこれまでの歴代政権の人びとが、戦争の大義名分を異常に気にしてきたのってそういうわけでもあるんですよね。彼らが自分の行いを対外的に正当化する為というのは勿論あるんだけれど、しかしそれと同じくらい国内向けの国民の支持を得る為にこそ、彼らはそうしたものに人一倍(国一倍)こだわってきた。


しかしそんな考え方を一変させたのがあの『9・11』だったんです。そうして彼らはアフガニスタンイラクと突き進んで行った。しかしその神通力は10年以上経った現在、ご存知のようにもう既にかなり薄れつつあるわけなんですよね。
そう考えると『米軍の予算を今後十年間で15億ドル自動的に削減する「トリガーメカニズム」』もその揺り戻し・反動なのでしょうか。


ともあれ、今更ながらやっぱりあの事件は歴史を変えたんだなぁとしみじみ思ったりします。