欧州連合内での攻守交替

ようやく重い腰をあげはじめた人々のお話。


独仏首脳、税制統合など「ユーロ圏政府」提案 : 国際 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
「明日から本気出す」な人たちが、ついに本気出してきたなーという感じ。しかもドイツとフランスでこんなこと言い出す辺り本気具合が窺がえます。特にフランスがドイツに同調したのは大きな流れの変化なのかなぁと。
以前も少し書いたんですけども、一連の欧州連合の経済危機の解答としてよく叫ばれていた「ユーロ解体」という一方で、しかしその逆側には常に「経済統合の更なる推進」があるわけであります。諦めるのではなく、もっと前に進む。確かにそれはもう一つの解答なんですよね。各国バラバラな基準による財政政策こそが原因だというのはおそらくかなりの部分まで正しい。
そしてまぁこういう流れになるのも解らない話ではありませんよね。こうした危機は、常に「改革の母」となるわけだから。逆に危機を乗り越えちゃって改革の機運がしぼむ、というのもものすごくよくあるお話ではありますけど。


で、こうした試みが一体誰から批判されるのかというと、主にそれは欧州内でも左派な人たちによって忌避されるんです。
フィンランド財務相、独仏の経済統合推進案に慎重な見方| ビジネスニュース| Reuters
つまり、一歩間違えばギリシャのようになってしまいかねない、しかしそれでいて上手いことバランスをとってきた北の方によくある福祉国家な人びとにとっては、そんな余計なことされても困るんですよね。ある種そうした手厚い福祉政策というのは彼らの誇りでもあるわけで。そして実際彼らは「これまでは」上手くやってきているのだから。
右側からの欧州統合推進への批判の多くが「主権の喪失」への恐れであったように、左側からの欧州統合推進への批判の多くが「福祉の削減」への恐れだった。
統合が進めばそれぞれの国家主権は徐々に失われていくし、そして統合が進めば特徴ある福祉政策も徐々に失われていくと。彼らはおそらくどちらも正しい。


まぁこうして見ると、それまで「国家主権が云々」と言っていたはずのドイツやフランスが声を合わせて統合を推進することに繋がる「一律的な緊縮財政や財政規律」を求める、というのはなんというか皮肉な構図ですよね。そしてフィンランドのような国は反発すると。あるいはユーロの中心としての独仏とそれに反発する周辺国の対立の構図、においても攻守が逆転したのかなぁと。
そんないつのまにか攻守交替した欧州連合さんちのお話でした。