ザ・政争の具

これを進化と呼ぶか退化と呼ぶかは悩ましいところではあります。


米大学生のイベントで人種・性別ごとの値段表示、差別だと批判集まる 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
CNN.co.jp:「白人2ドル、黒人75セント」は人種差別? 米大学で物議

【9月26日 AFP】米カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)の共和党学生部(Campus Republican)の学生たちが、購入者の人種や性別によって商品の値段が違うベイクセール(手作りケーキなどのバザー)を計画したところ、人種差別的だとして脅迫まで起きる騒ぎになっている。

 同大共和党学生部のショーン・ルイス(Shawn Lewis)代表は、入学審査の際に人種と性別を考慮することをカリフォルニア州公立大学に求める法案に抗議する目的で「多様性増大ベイクセール(Increase Diversity Bake Sale)」と銘打ってこのイベントを企画したと説明し、批判的な人が過剰反応したと述べた。

米大学生のイベントで人種・性別ごとの値段表示、差別だと批判集まる 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

うわぁ楽しそう。人種差別の歴史=国家の歴史、なアメリカらしいお話ではあります。そしてこうした問題さえも共和党vs民主党な争いになるアメリカ。歴史ある二大政党制って一体なんなんでしょうね?
まぁ確かに彼らのやっていること自体が荒唐無稽というわけでもないんです。入学審査に「人種と性別を考慮すること」をバザーの価格にまで転用すれば実際その通りなわけです。


困っている人を助けることは確かに美しい行為だということはできるけれども、しかしそれをあからさまに騒ぎ立てることもまた彼らの本質的な望みにかなうものではない。だってそうした人びとが求めているのは「(自立した)普通の人間らしい扱い」なんだから。勿論そこで不当な扱いされているのならばそれを是正すべく手を差し伸べるべきだし、しかし逆に過剰な援助もまた彼らを「(自立した)普通の人間らしい扱い」から遠ざけている。
差別している側も、逆にそれを「差別よくない!」と煽り立てることも、どちらもベクトルは真逆にありながら結局同じ位置に立っていると揶揄されるのはそういう理由からなんですよね。

 一方、米民主党学生部のアナイース・ラブワ(Anais LaVoie)代表は、イベント主催者らに謝罪を要求した。米ABCテレビによると、ラブワ代表は「彼らの主張のやり方、彼らの使った言葉、大学キャンパスにいる有色人種の人びとの苦しみを笑いものにしたことは、私にとって実に胸の悪くなるようなことだ」と語った。

米大学生のイベントで人種・性別ごとの値段表示、差別だと批判集まる 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

その意味で、彼の発言は正しい。「有色人種の人びとの苦しみを笑いものにした」確かにその通りです。ここで特に差別問題に理解の薄い私たち日本の現代っ子たちが理解すべきなのは、では何が彼らの苦しみなのかという点にあるわけです。
つまりそれは彼らの自尊心が傷つけられたということ。援助を受けている人に向かって敢えてそれを口にすること。確かに良識ある紳士淑女ならばカツラの人に向かって「それカツラですよね?」とは言うべきではありません。でも何かそれ以上の意味が今回の件に込められているのかというと、それも微妙だなぁと思うわけです。


まぁぶっちゃけた話をすれば、最初にこの「人種性別によって値段の違うバザー」とやらで真に攻撃したかったのは別にそうした優遇された有色人種ではなく、その向こう側に居る人びとなんですよね。彼らが推進しようとする入学審査の考慮もまた差別ではないか、バカじゃねーの、と。こうして大騒ぎになって発端の人は今最高のドヤ顔でしょう。そんな海の向こうの炎上マーケティング
結局のところ、「多様性増大ベイクセール」とやらも共和党員が民主党員を攻撃する口実に過ぎない。そしてまた民主党員もを共和党員を同様に攻撃する口実としてやり返すわけです。どちらに人びとにとっても、最早そうした問題は政争の具でしかないのだから。そしてその『口実』にすぎない人たちの現状は省みられない、だけならまだマシだったのに、それが延々とネタとして受け継がれていく。なんというコントでしょう。
歴史ある二大政党制って一体なんなんでしょうね?