イギリス保守党の伝統芸

あのサッチャーさんの頃からずっと同じ事をやっている人たち。まぁそれもこれも「彼女が偉大すぎたから」という所に落ち着いてしまうのかなぁと。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/32480
イギリス孤立でEU分裂の危機 | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
EU首脳会議でのイギリスの『栄光ある孤立』について、イギリス内部での反発についてのお話。

 だが、首脳会議で起きたことについて、英国政府内では非難の応酬が飛び交っている。クレッグ副首相は、フランスとドイツの「強硬姿勢」にも責任の一端があると述べながら、キャメロン首相は欧州懐疑派の保守党一般議員が持つ圧倒的な力のせいで拒否権の行使を余儀なくされたと考えている。

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わーたいへんだー。
しかしまぁイギリス保守党欧州連合との距離感を巡って内紛してしまうのは、1980年代後半のサッチャーさんの時代から30年近く続く伝統芸でしかないわけですよね。イギリス保守党にとっての対欧州政策について。ぶっちゃけてしまえば、この人たちずっと同じ事をやってきたので今回のことにしても「コイツらまだやってるのか……」という気持ちの方が強いと思うんです。


そもそも「鉄の女」たるサッチャーさんが最終的に首相から降りることになった原因のひとつからして反EC(欧州共同体)政策だったりしたわけで。彼女のそのあまりにも強硬な反対が、結果として保守党内での分裂と求心力低下を招いたというのは有名な話であります。
自らその座を降りた彼女の後を継いだメージャーさんも、当然の流れとして、彼女の残した『負の遺産』である対欧州政策にずっと汲々とすることになります。特にマーストリヒト条約をめぐる当時のイギリス保守党内での争いは、それこそ「保守党の分裂」という現実が見え隠れするほどの内部対立でした。そしてそんなグダグダな保守党は、結果として、1997年のブレアさんに見事に歴史的大敗を喫してしまうことになるのです。
ということで、この人たち延々とずっと同じことやってるんですよね。
このままだと保守党政権はまさかの『三代続けて対欧州政策でコケた政権』というとても恥ずかしいレッテルがついてしまいそうです。名実共にサッチャリズムの後継者たるメージャーさんがそうなってしまったのは、まぁ公平に見ても仕方のないことかなぁとは思うんですけど、しかしあれからもう15年も経っているのにまだ答えが出せていない人たち。ザ・「まるで成長していない……」人たち。やっぱり今も昔もイギリスにとっての対欧州政策は政治的にクリティカル過ぎる、ということの証明でもあるんでしょうけども。


贔屓目に見れば、「市場統合はyes、政治統合はno」そんな伝統的なイギリスの立場を固辞してもいる、という見方もできるかもしれません。しかしまぁそれも、欧州連合内でのイギリスの地位と影響力が保証されている限り、という当然の前提がつくのです。故に当時のメージャーさんにしてもマーストリヒト条約に対して、イギリスが孤立ではなく無力化してしまうことを恐れたからこそ、賛成に回ったわけで。
栄光ある孤立』確かにそれも結構なんですけど、それで(欧州)大陸への影響力まで失ってしまったら元も子もないんだから。


ともあれ、こうした保守党の伝統芸に対する責任の全てをキャメロンさんに委ねるのもあまりフェアではありませんよね。やっぱり彼も変えようとも変えられないその『伝統』の犠牲者でもあるわけだから。あの時サッチャーさんがもう少しナショナリズムを抑えていてくれれば、あるいはチャーチルさん辺りが欧州共同体の必要性だけでなくきちんとイギリスの対欧州政策についてまで言及していてくれればよかったのにね。まぁ歴史にたらればは禁句ではあるんですけど。
そんなイギリス保守党内での家庭の事情のお話でした。