代理戦争inシリア

もう棄権するなんて言わないよ絶対byロシア(二度目)



政府軍の「虐殺」で少なくとも217人が死亡、シリア人権監視団 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
ということでついに公然と「虐殺」の言葉が使われるようになったシリアさんちでございます。この構図は『政府対反政府』という内戦の危機だけでなく、『スンニ派対アラウィ派』な宗教戦争であり、更にいうと『トルコ・アラブ連合体対イラン・シリア連合』であり、結局のところ『西欧対中露』という構図がそこにあるわけです。いやぁどうしようもないですよね。どう見ても冷戦時代によくあった代理戦争一歩手前です。


時事ドットコム:シリア決議、中ロが再び拒否権=安保理、機能不全を露呈
そして、案の定というべきか、こうして中露は軍事介入の言及がないとしても、やっぱり拒否権の行使に至ってしまうのでした。まぁ当たり前ですよね、だって前回のリビアでロシアさんち(ついでに中国さんちも)はああして痛い目にあったんだから今回同意するはずがない。一連の『アラブの春』を巡る安保理決議において、まさに一度目の時に棄権してしまってリビアへの国連の不介入化に一度失敗したことで、海軍基地等のシリアでの権益を守る為に「二度目から絶対に反対する絶対にだ」とロシアさんは正しく学習したのでした。
こうした構図はあの朝鮮戦争の時とそっくりで、これには苦笑いするしかありませんよね。あの時も最初にソ連が席を立ったおかげで、最初で最後の『国連軍』が実現したわけだから。
しかしまぁ以前の日記でも書きましたけど、やっぱり、リビア国民が救われてシリア国民が救われなかった、という両者の違いが最終的にはその点に求められてしまうのは、笑っていいのか悲しんでいいのかよく解りませんよね。つまり、リビアはシリアよりも「先だったから」救われたのだと。もうちょっと早く反乱が起きていれば、あるいはもっと早く虐殺が起きていれば、全く逆の結果になっていたかもしれないと思うと、二重の意味で救われないお話であります。


さて置き、じゃあシリアが最悪の状況かというとまだそうでもないわけですよね。少なくともまだ、彼ら虐殺される反政府の人たちは上記アラブ連合や欧米の人たちから完全に見捨てられてはいないわけだから。まぁ見捨てられていないというだけで現実的な介入は(隣国であるトルコを除き)ほぼ全くやる気はないわけですけど。
もしこれで打つ手なしと見捨てられ完全に失敗するとなると、あの時の――湾岸戦争後にフセイン政権打倒を目指しながら見事に失敗したイラクの1991年の反政府運動という悪夢の実例があったりするのでした。アメリカ等の介入がないと安心した故・フセインさんはそれはもうはっちゃけて弾圧をしまくったのでした。見捨てた結果10万人以上の人が亡くなったとされるあのときに比べれば、まぁ今のシリアさんちはまだマシなのかもしれませんよね。だからといってやっぱり何の救いにもならないわけですけど。
ただ、私たちはあなた達をまだ見捨ててはいない、というポーズだけ。まぁ意思表明するだけならタダですしね。そして前にも後ろにも動けなくなってしまうと。代理戦争一歩手前な以上、他に選択肢がない私たち。


ともあれ、いやぁ代理戦争ってコワイですよね、という身も蓋もないお話でした。