嘘と誇張とパクスアメリカーナ

「ウソツキは一体誰なんでしょうね?」というお話。なんかノリが人狼ぽい。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34481

ワシントンで不可解なことが起きた。イラク侵攻に反対したリベラル派の米国大統領が、かつてイラク戦争を後押ししたネオコン新保守主義)の急先鋒を支持したのだ。

バラク・オバマ大統領はロバート・ケーガン氏の論文「The Myth of America's Decline(米国の衰退の神話)」の内容を評価することで、同氏を助けることになった。問題の論文は2月に出版されるケーガン氏の著作『The World that America Made(米国が作った世界)』からの抜粋だからだ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34481

まぁ一つの見方として面白いお話ではあるかなぁと。本当にアメリカが衰退しつつあるのかどうかはともかくとしても、しかしその中の人がそれを認めることなんてまずない、という解りやすい実例であります。
身も蓋もなく言ってしまえば、だからこそ超大国が衰退し国際関係が新たな局面に突入しようとするときは戦争になる、なんて言われたりするわけですよね。衰退を認めない超大国と、そして「最早超大国ではない」としてそれに挑む挑戦者たち。例外と呼べるのは20世紀初頭にあったアメリカとイギリスの入れ替わり位で、ほとんどすべての場合においてそりゃお互いケンカにならないわけがない。
それは現在のアメリカだけにある問題というわけでは勿論なくて、どんな大国にしろその自らの死にゆく運命を受け入れることは極めて難しいのです。台頭する挑戦者に『意図的に』道を譲るなんてこと、歴史上にやってみせた国などほとんど存在しないのだから。実際、欧州連合というものを実現しつつある今でもヨーロッパ世界における『盟主』の座を明け渡したくないと抵抗するフランスやイギリスだってあるわけで。その両者の姿がどれだけ違うのかというと、まぁあんまり大差ないわけですよね。
よくアメリカ嫌いな人が「アメリカが世界の平和の敵だ!」なんて仰ったりしますけど、むしろ歴史的にはその超大国が衰退するときにこそ、こうして戦争の危険が高まるわけでして。あるいはここ20年近くあったアメリカ一極化した世界ではなく、アメリカ衰退後の多極化しつつある現状をまさに証明して見せたのが、あの安保理決議の失敗によって『殺害許可証を与えた』と揶揄されるシリア*1での無力さ加減でもあるわけですよね。
じゃあ一体どちらの方が平和な世界になるんでしょうね?


ともあれ、アメリカの特に大統領である人が内心はともかくとしても、その衰退論をおおっぴらに認めるなんてことできるはずがありませんよね。特に今は選挙前でもあるわけだし。「アメリカは衰退した!」なんて有権者の前でとても言えない。結局ただそういうお話でしかないんじゃないのかなぁと。
私たち日本の政治状況でもよく見られるような、薄々解っていてもできない約束をするしかない、出来ないことも出来ると誤魔化すしかない、そんな政治家と有権者たちの国内政策の議論と構図的には大して違いはないんじゃないかと思います。
解っていてもこうするしかない、それは愛故の嘘なのだと、いやぁ民主主義政治ってこわいなぁ。