名実ともに『戦争を終結させた』大統領

いつだって戦争は「始めるよりも終わらせる方がずっと難しい」なんて言われてもいるわけですし。そんな難しい仕事を何はともあれ実現させたオバマさんについて。



米軍最高司令官としてのオバマ大統領、世論が支持 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
また色々言われそうな話ではありますけど、なんというか『ノーベル平和賞受賞者』で『最高司令官として極めて高評価』というのは、いかにもアメリカらしくはありますよね。
しかしまぁアフガニスタンイラク)からの撤退や、ビン・ラディンの殺害にしても、実際共和党政権では難しかっただろうなぁという政策を確かに実行して見せたからこそ、という点は理解できなくもありません。それが優秀さの証明であるかは別問題としても、しかし結果としてそれは成功したし、そして約束通りに兎にも角にもこうして撤兵を決めたんだから。長期的な安全保障や外交政策についての賛否も当然あるんでしょうけど、しかし彼は『国民の声』に正しく応えた、のだと。
特にビンラディンさんの殺害(というか事実上の暗殺ですよね)という点については、かつて『米中対話』を実現したのがリベラルな大統領ではなく共和党保守派であったニクソンさんだからこそ成しえた、と評価されるような構図と近いのかなぁと。大統領本来のポジションとは真逆にあったからこそ逆に反対派を説得できたという構図。つまり伝統的なそれこそブッシュJrさんのような『正義の戦争』を追求する大統領では、他国のそれを黙認することは出来ても、自ら直接手を下すこうした暗殺まがいのやり方は無理だったんじゃないかと少し思ったりします。
その意味では、正しく政権交代の意義はあったと言えるんじゃないでしょうか。どっかの国とはえらい違いですよね。単純に勝つか負けるかではなく、それぞれお互いの党にできないことをそれぞれに実現する、それこそが政権交代であると。うらやましいお話です。


さて置き、よくアメリカについて「戦争バカ」と揶揄されたりしますけど、それは(特に私たち日本と比較してその差が際立っている)軍事力の行使に躊躇しないという点で確かにある面までは正しくはあるのです。しかしそのことが逆説的に証明しているのは、彼らは彼ら自身が考えるところの『正しい戦争』『意味のある戦争』だからこそ、その犠牲を許容できるという意味でもあるわけですよね。建国以来から持つアメリカ国民の孤立主義傾向と合わせて、特にベトナム戦争以降ではそうした感情こそがアメリカ世論の支配的な流れであったのです。彼らは「正しい戦争ならば賛成する」からこそ、しかし同時に「無駄・無意味な戦争は許せない」とも強く思うのです。当たり前の話ではありますよね。
だからこそ、『9・11』の熱狂も10近く経ち冷めていく中で、しかし自分たちが始めた以上当然の責任として中々アフガニスタンイラクから撤退すること――身も蓋もなく言ってしまえば「見捨てる」こと――ができなかった中で、オバマさんは見事にアメリカ軍を撤退させてみせたわけです。現地政府がほぼ一貫して引き止め懸念を表明しているように、おそらく長期的に見ればあまり良い結果になるとは個人的にも思えませんけど、しかしそれでもアメリカ国民の多くはそうは思っていなかったわけです。

 また、2012年米大統領選で共和党指名を目指す候補らから激しく批判されているアフガニスタンからの米軍撤退計画は、78%が支持した。

米軍最高司令官としてのオバマ大統領、世論が支持 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

そんな国民の声に応え、見事にやって見せた点は確かにオバマさんの手腕であり実績ではあるよなぁと。
かくして現地からの撤兵と犯人の殺害という、まぁぶっちゃけ強引なやり方ではあったものの、しかしおそらく共和党にはできなかっただろう『戦争を終結させる』ことをやってみせた。それこそが今回のオバマさんの軍司令官としての評価に繋がっているんじゃないでしょうか。つまり、戦争を終結させた大統領、であると。


ともあれ、おめでとうございます、ということでよろしいんじゃないでしょうか。長期的な影響はともかくとしても、しかし短期的な次の大統領選挙にはやっぱり間に合ったわけだから。ぶっちゃけてしまえば「それこそ」が重要だったわけですし。某ノートの人のように「計算通り」と悪そうな顔してそうです。