イスラム主義対軍部

見事にエジプトの現状を象徴するかのような『決選投票』ではありますよね。そんな究極の二択について。


エジプト大統領選、決選投票へ 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
CNN.co.jp:決戦投票は同胞団候補と元首相の対決か、エジプト大統領選 - (1/2)
ということでエジプトでは事前の予想通りに決選投票にまでもつこれみ、そしてわずかに希望を抱いていたリベラルな人たちは、苦しい選択を迫られることになってしまったなぁと。端から見るとそれぞれが妥協できずに候補者が乱立した結果、最も素朴で強固な支持基盤を持つ二人が最終的に生き残ってしまったという、まぁなんというか「選挙あるある」な結果ではあります。

しかし見事に穏健派やリベラルな人たちは分断されてしまいましたよね。せめてどこか一つでも協力してれば余裕で決戦投票にいけたのに。ところが残ったのは、ムスリム同胞団の推薦候補と軍の推薦候補であるのでした。元々同胞団のムルシさんは最有力候補だったとはいえ、しかし僅差で二位につけたのがムバラクさんの事実上の後継候補であるシャフィクさんであるのは結構以外だったなぁと。もちろん事実上初めての選挙で予測のノウハウなんてものがなかったという点はあるにしろ――しかし彼が二位に付ける予想をしていた人はあんまり居ませんでしたよね。
それだけ旧体制派である彼の支持があったということは、少なくない数の人が何より生活の安定を求めていることの証左でもあるとも言えるのでしょう。まぁ解らなくはありませんよね。あの『アラブの春』以来、その熱狂と興奮は本来あった日常生活を押し流してしまったわけで。せめて以前と同程度の生活を取り戻したいと願うのは当然の帰結ではあります。


ただ、穿った見方をすれば、以前の憲法起草をめぐるプロセスのごたごたを見ると「選挙よりも先に憲法から決めるべきだ」と訴えていたリベラルな市民団体の声は、軍とムスリム同胞団の協力によって見事に潰されてしまったわけで。そして決選投票に残ったのはそんな両者であったことを考えると、どちらが勝つにせよ、敵の敵は味方とばかりに案外上手いことをなぁなぁでやっていくのかもしれません。『エジプト革命』とはつまりそういうモノだったのだ、と言ってしまっては冷笑的に過ぎるかもしれませんが。ただムバラクが消えて代わりにそこにイスラム勢力が台頭しただけ。
まぁそうなるとどう見ても第二革命フラグが立ってしまいますよね。立った! フラグが立った!


ということでどっちに転んでも概ね「俺たちの戦いはこれからだ!」オチなエジプトさんちの家庭の事情であります。やっぱりエジプトはこれからも色々大変なのでしょう。
がんばれエジプト。