約束されていた弾圧

茶番だと言うにはあまりにも血が流れてしまっていますけども。



エジプトのモルシ派強制排除、世界各国が非難 死者578人に 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2013/08/107519.php
ということでエジプトさんちのカウントダウンが遂にゼロになってしまったそうで。まぁこの事態発生当初からずっと両者の間で対話が続いてきたとは言われていましたけど「デモやめろ」「うるせーモルシを大統領に戻せ」というどこまでいっても平行線な対話(?)では、最終的にこうなる以外にどうしようもないよなぁと。
正直、両者の対立の溝は、ムバラクさんの時代と同じかそれ以上に深いものになってしまっている。

【8月16日 AFP】エジプトの首都カイロ(Cairo)で14日、ムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)前大統領の出身母体であるイスラム主義組織「ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)」の座り込みデモを警官隊が強制排除し、600人近くの死者が出ている問題で、軍主導の暫定政府に対する世界各国からの非難が高まっている。

 同国保健省によると、これまでに推定43人の警官を含む少なくとも578人が死亡。同国でここ数十年間に起きた中では最悪の流血の惨事となっている。

エジプトのモルシ派強制排除、世界各国が非難 死者578人に 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

かくして、対話の次にやってくるのは当然、身も蓋もなく暴力であったと。とても軍事政権らしいやり方でありますよね。一方のムスリム同胞団の方にしても、この事態を「半ば嬉々として待っていた」という面も決して否定できないわけで。まさに彼らはこうして強制排除させることで、得点を稼ごうとしている。とても殉教者らしいやり方であります。
身も蓋もなく言ってしまえば、両者はどちらも同じ方向を見ていた必然の結末、というだけ。




ともあれ、まぁエジプトの構図も――元々そうだったとはいえモルシさんの更迭以来特に――なんだか穏やかな状況ではなくなりつつあるのが、ただのエジプト国内での争いというだけでなく、周辺利害関係国までも巻き込んでいるという点にあるわけですよね。
シリアがまったく同じ状況でひたすら内戦に終わりが見えなくなっているように、エジプトも同じ道をたどりつつあるんじゃないかと。同胞団を支援する国々と、そして現状の軍事政権を支援する国々。国内メディアというだけでなく、カタール支援のアルジャジーラとサウジ支援のアルアラビヤの報道内容の乖離なんてその典型ですらあります。ちなみにもちろん『民主主義勢力』に後ろ盾となる国外勢力は居たりするわけで、民主主義を愛する我らが欧米各国。でも彼らはひたすら取り澄ました顔で説教はするけども(彼らもバカじゃないので事実上の最弱勢力である彼らにわざわざ下手に肩入れしようとせずに)別に何もしない。
両者共にそうした国々の支援――もっと言えば非公式の「お墨付き」を得ているものだから、更に国内的な妥協と合意のインセンティブは失われつつある。そしてそんな二大政治勢力間の争いから、両者の都合の良いときだけ持ち上げられ利用される民主主義勢力たち。このエジプトにおける国内政治及び国外支援の政治的なパワーバランスを見る限り、まぁどこまでいってもそりゃ民主主義なんて絵に描いた餅でしかないよなぁと生暖かい気持ちになってしまいますよね。
それこそ本来ならばこういう時にこそ、弱体化した民主主義勢力の背を押すためにアメリカやヨーロッパが――私たち日本?はっはっは――前に出なければいけないはずが、やっぱりヨーロッパの彼らはひたすらやる気はないし、オバマさんはまぁなんというか何もしない以上にタチの悪い日和見ポジションなので以下略であります。シリアとまったく同じ構図。



エジプト革命の行き着いた果て。革命後にこそやってくる毎度御馴染み決定的な方針対立。いやぁムバラクさんも刑務所の中で笑ってるんじゃないかな。