NATO衰退の先にあるもの

勿論それが良いことなのか悪いことなのかはさっぱり解りません。



シリアの大規模砲撃で安保理が非難声明、政府軍の関与明記| Reuters
CNN.co.jp:シリア中部ホウラの死者100人以上に 安保理が非難声明
「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです」inシリア。しかし元気だったのが実はアサドさんだった、というまったく救えないオチ。
かくしてダラダラと続いていたシリアさんちの流血の事態は、またもや市民への大規模砲撃という事態にまで至ってようやく再び国連安保理の報道声明が出されることになったのでした。ていうかこの人たち毎度毎度砲撃するの好きですよね。あんまり見ない虐殺のパターンな気がします。一体なんでこのやり方なんでしょうか。
ちなみに約9ヶ月前の去年の8月にもほぼまったく同じこと(『デモ弾圧』に対する議長声明*1)をやっているんですけど、まぁつまりそれってこの9ヶ月間はやっぱりシリアの流血をひたすら見守っていただけ、ということがまたもや証明されてしまいましたよね。「一滴一滴その血が流れるのをただ見守るお仕事」とかどんなブラックジョークかという感じではあります。まぁ先日も書いたようにそれが現代における国際関係の姿だと言ってしまえば身も蓋もありませんが。


中東の窓 : シリア情勢(houlaの虐殺 安保理非難声明)
上記『中東の窓』さんちでも言及されていますが、しかし今回のそれは前回よりもずっとあっさりロシアさんや中国さんも賛成に回ったそうで。一体なんででしょうね? ――勿論どうせ一度やったんだから二度も三度も同じだろう、という理由が大きいのでしょう。上記中東の窓さんちでは「あまりにもシリアがやり過ぎて中露が重荷に感じ始めたからではないか」と解説されています。
個人的には、ようやくロシアや中国さんは「最早介入はない」と安心したから、という要素もあるんじゃないかと思うんです。
先日のNATOサミットでも事務総長自ら「我々はシリアに介入する気はない」なんて仰っていたように*2、シリア問題の当初からやっぱりロシアさんや中国さんはそうした事態こそをずっと懸念していたわけで。リビアのように彼らは大義名分の下介入するのではないか、と。しかしそんなNATOの事務総長は昨日も別の場所で「シリア問題には介入しない」と同じことを言っていたそうですし*3、そしてそれはもう何度も繰り返されてきた言葉*4でもあるんです。「我々はシリアには介入しない」なんて。そうしたNATO側の説得と努力がようやく実を結ぶことになったんじゃないでしょうか。
いやぁ、誠意を尽くすって大事ですよね。努力を重ねて中露の信頼を得ることに成功した人たち。まぁそれが事実上の「シリアは見捨てます」宣言なあたり喜んでいいのか悲しんでいいのかよく解りませんけど。


NATO首脳会議閉幕、2014年末以降のアフガン支援方針など確認 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35308
ということで、先日シカゴであったNATO首脳会議について色々解説があったりしましたけど、その結果の一つとして表に出てきたのが今回のシリア問題における中露の路線変更ではないかと思ったりします。アフガニスタンだけでもう一杯一杯なのにシリアにまで手を広げる余裕なんてとてもない人たち。そりゃ「武力介入なんてなかったんだ」と安心してロシアや中国さんちも賛成しちゃいますよね。
NATOが相対的に弱くなった結果として、そこに妥協の余地が生まれたのだと。両者の妥協による均衡状態。確かにそれはある種の『平和』ではあります。
もちろんこうした協力体制が長期的に見てシリア問題の解決にとってプラスに働くことになるかもしれません。ならないかもしれません。ただどちらにしてもこうした構図は世界の他の場所でも影響を与えることになるのかなぁと。


がんばれシリア。