「上側は天国、下側は地獄、これな〜んだ?」

このねじれ現象が男女の雇用問題においてめんどくさいお話ではあるのかなぁと。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120522/232468/
なんかまたミョーなグラフが出てきておりますけど、まぁそれはそれとして。

 グラフから明らかなように、80年以降、学歴間賃金格差と女性の相対賃金は極めて似た動きを見せている。しかし、この両者の変動が一つの要因によって引き起こされてきたものなのか、異なる要因がたまたま同時期に作用したのかは必ずしも明らかではない。賃金は、様々な社会・経済的な要因が複雑に絡み合うことで決まると考えられるためだ。社会科学者の間では長年、両者の一致は偶然だとする見方が有力とされていたが、近年の労働経済学の研究ではこうした見方を覆す動きがある。両者のつながりを理解する鍵は、80年代に急速に進展した生産工程におけるコンピュータ管理と自動化だ。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120522/232468/

仰るとおり、こうした変化をもたらしたのが『コンピュータ管理と自動化』というのは確かにその通りなんでしょうけども、しかしこの『男性の学歴間賃金格差』と『男性と女性との相対賃金』のリンクってそこまで難しいお話なのかなぁとは思うんですよね。


つまりそれって、それまで男性の雇用であった中間層以下の仕事を女性が奪いつくした結果、男性側の二極化とそして男女間の相対賃金の縮小が進んだだけじゃないのかと。
勿論上側の男性たちの賃金の上昇もあるんでしょうけど、しかし同時に下側の男性たちは(女性との競争に敗れた結果)見事に仕事がなくなっていく。その一方でエリート層の女性たちは、以前の日記でも少し書きましたけど、やっぱり(男性には無縁な)出産の問題が致命的に足を引っ張ってしまう。こうして更にそうした優秀な女性たちは、あまり優秀でない男性の仕事をも奪っていくと。不利になっていく男性と、その影響をあまり受けない男性たち。そりゃ男性の賃金格差は広がってしまいますよね。上記リンク先で男性側だけで『女性の学歴間賃金格差』に言及されていないのはさもありなんという感じです。
ともあれ、こうした中間以下の区分においては少なくとも、女性が男性よりも雇用面で有利にあるというのは確かにそのとおりなのかなぁと。そうした低賃金の労働においてまったく同条件であれば男性を雇うよりも女性を雇った方がお得である。そんな風に考えている人は日本でも少なくないんじゃないでしょうか。


その意味で、この両者ってかなりの部分でトレードオフな問題なのかなぁとは思うんです。どちらかを是正しようとすればもう一方は犠牲となるしかない。究極的に女性側に『出産の問題』がある以上、キャリアな人たちであればあるほど女性側が不利であるし、しかしそうした問題が影響しにくい所では男性は女性に負けてしまう。
そして日本では、女性の社会進出が「まだ」そこまで進んでいない故にこうした構造が(男性にとって)致命的になるまでは至っていないと。よく日本では『婚活』に命を掛ける女性が話題になったりしますけど、ぶっちゃけそれって大多数を占める普通の男性たちにとって女性がそう考えてくれている方が実はまだ幸せなのかもしれませんよね。だって女性を本気を出したら――少なくとも中間層以下の労働市場においては――男性は駆逐されてしまうのだから。


この辺の問題は労働市場における、低賃金の側では猛威を振るう女性たちと、しかし高賃金の側では確実に『性差』によって不利になってしまう女性たち、という面で色々と議論が分かれてしまう原因のひとつなのかもしれません。故にその「差別問題」というお話になった時、人によって色々認識が分かれてしまうんじゃないでしょうか。そしてその解決において積極的差別是正措置とか言って荒れてしまうと。この辺は一般にエリートとされるような人たちがアファーマティブ・アクションを嗜好する一方で、しかし競争に直に晒される非エリートな人たちが強く反発してしまう構造と近いモノがある気がします。
まぁ難しいお話ですよね。


がんばれ色んな人たち。