それを許さないのは政治の罪?

ここを突っ込んでいくと、『無知』は国民の罪なのか? というお話になってしまって微妙な所へ。


http://econdays.net/?p=6674
ということで皆だいすきクルーグマン先生の今日のありがたいお言葉であります。

多くの経済学者が指摘しているように,アメリカはいま古典的な債務デフレに苦しんでいる:経済のいたるところで,みんなが支出を削減して債務返済につとめているんだけど,まさにそうすることによって,不況が引き起こされ,みんなの債務問題はいっそうひどくなっていく.他でもなくこういう状況でこそ,政府支出を一時的に増加させて,民間支出の停滞を相殺し,民間部門に懐具合を立て直してもらう時間を与えるべきなんだ.ところが,それがなされていない.

そこで話の要点はこうなる.もしレーガン流のケインズ主義を踏襲していたなら,いまの状況をずっとマシになってることだろう.レーガンはたしかに小さな政府について演説してまわったかもしれない.でも,実践編では彼は支出を大幅に増やして切り盛りした――そして,それこそアメリカがいま必要としていることに他ならない.

http://econdays.net/?p=6674

えぇ、えぇ、仰るとおりでございますとも。
ただまぁレーガンさんのアレってどう見ても「政治的に無理だったから」支出が増大してしまったという身も蓋もないお話ではあるんですよね。
元々彼が訴えたレーガノミックス――小さな政府って、減税して、且つ政府支出を減らす、という概ね王道のやり方だったわけで。その上で『減税』はまぁ皆が喜ぶ政策であるので好評を博したものの、しかしもう一方の『政府支出の削減』の方は、それはまぁ国民に批判され、それを背景にした民主党の皆様に反対され頓挫してしまったのでした。かくしてレーガン政権は減税は実行したもののしかし――政治的な壁によって――政府支出は減らせないまま軍事費の増大と併せて、財政赤字を見事に積み上げまくってしまう。まぁそれもクルーグマン先生的には結果オーライだったのかもしれませんけど。
つまり、結局そういうお話ではないかと思うんです。
現在のアメリカでも同様に「ところが、それがなされていない」状況もほとんどそのまま、政治的に不可能であるから、ですよね。支出をもっと増大させよう、と幾らその「論理的な正しさ」を訴えても反対されてしまう構図。確かにその気持ちはわからなくはありませんよね。「今月はヤバいから支出を減らそう」とか。ミクロな個人の経験からすれば確かにそれは正解の一つではあるんだから。
クルーグマン先生なんかは概ね(そのポジションに従って)共和党がバカだからだ、と清清しいまでに言い切っておりますけど。そうした判断基準が経済学の論理に適うかどうかは実の所そこまで重要な要素ではなくて、結局――良くも悪くも――国民の支持があるかないかによってその是非が決まってしまう。幾ら共和党をバカだと言ったところで、彼らを支持する人たちが一定数存在している以上、その声を無視するなんてことできるわけがないんです。
だって彼ら政治家たちはまさに政治家である以上、選挙で勝たなくてはいけないんだから。
俺のやり方は論理的に見て正しいのだから黙って従えばいい。まぁ確かにそれが正解なことも多々あるでしょうけど、しかしそれをやってしまったら以下略。でも現在の世界経済はそんな悠長なことをやっている暇がなくなりつつあるのもやっぱり事実なわけで。もういっそのこと軍事の分野にあるように、経済も一定程度を政府の専権事項とした方が良いのかもしれません。ただ、それをやるには『経済』は私たち市民に身近過ぎて無理ですよね。


じゃあ一体どうしたらいいんでしょうね? 
現状において共和党がかなりアレになっているのはまさにその通りなのでしょう。ただまぁそれが100%全て共和党の政治家たちの側から――クルーグマン先生風に言うと「彼らが有権者にウソを教えている」――なされているのかというと、そうでもないんじゃないかと。「共和党内」ですら中道・穏健派だった人がティーティーの候補に敗れるなんてことがニュースになっていたりしますよね。
やっぱりそれってかなりの面まで双方向からの影響によっているんじゃないかと思うんです。有権者が求めているものを政治家が提供している。民主党が提供できないものを共和党が提供している。だからこそこんなことになっている。
一体誰が悪いのでしょうね。
――有権者を騙す政治家が悪いのか? 
――簡単に騙される有権者が悪いのか? 
――対立を煽るマスメディアが悪いのか?


個人的に、クルーグマン先生のありがたい(そして無駄に熱意に満ちた)お話を見るたびにこうしたことを考えてしまいます。彼は毎度毎度「一体何で経済的に正しい答えがあるのにみんなそれをやらないんだ。まったくわけがわからないよ」と嘆いておりますけども、でもそれってまぁぶっちゃけ何処の国でも一緒ですよね。特に民主国家に生きる私たちにとっては、バカな独裁者だけに責任をおっかぶせられる国とは違って、避けようのない宿命であります。
政治家と、有権者と、マスコミと。
騙すバカと、騙されるバカと、煽るバカと。


いやぁみんしゅしゅぎってすばらしいせいどだなぁ。