嵐作戦ふたたび?

このシリアの構図ってどこかで見たことあったなぁと考えていたら思い出しました。

この状況を最終的に「解決」したのが、クロアチアによる「嵐作戦」であった。1995年になるとクロアチアは、欧州連合国際連合アメリカ合衆国、ロシアが提示するセルビア人勢力に一定の自治権を認める和平案に対して譲歩の姿勢を見せ時間を稼ぐ一方で、セルビア支配地域に展開する国連平和維持軍の活動期限切れに伴う早期の撤退を強く促していた。
平和維持軍の活動は規模を縮小することで同意されたが、その直後の5月にまず、クロアチア軍は西スラボニアを急襲。セルビア人の追い出しにかかった。続く8月3日から始まった「嵐作戦」ではクライナ・セルビア人共和国の首都クニンを目指して侵攻。わずか3日間の戦闘でクニンを占領した。この時の死者は約150人(但し、これはクロアチア側の公称である。セルビア側発表では最低でも婦女子を主体とする2,600人が虐殺されたとされる)。主にボスニアセルビア人支配地域を経由してセルビアに流出したセルビア人難民は15-20万人と見積もられている。この作戦を指揮したクロアチア軍将軍アンテ・ゴトヴィナはクロアチアの英雄として祭り上げられたが、一方で大量虐殺と大量の難民を生み出した事により旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷から訴追された。

クロアチア紛争 - Wikipedia

まぁどっちが敵対勢力の完全駆逐を狙うクロアチア軍の役割かさえ微妙な所なのが今回シリアのお話のカオスな所ではあるのでしょうけども。



国連安保理、シリアをめぐる決議案を否決 露中が拒否権行使 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで中露がまたもや拒否権しちゃったそうで。まぁいい加減三度目にもなると規定路線以外の何物でもないので特に驚きはありませんよね。しかしこれで曲がりなりにもシリアの停戦『監視』業務を行っていた国連監視団が任期切れとなってしまうわけで。一体どうするつもりなのかと見守っていたら、
国連、シリア停戦監視団の30日任期延長を採択| Reuters
どうにかこうにか30日延長に成功したそうで。おめでとうおめでとう。まぁその代償として中身が何もなくなってしまったわけですけど。イギリスさんらしいといえばその通りかもしれません。
でもまぁやっぱりどこを探しても監視団に実権なんてどこにも見当たらないので、現状追認=事実上の内戦状態を抑止することなんてできるはずもないと。ますます混迷していくシリアにありながら、しかしただ見守っているだけの人たち。国防相の死亡やダマスカスの攻防や国境検問所の反政府側の奪取など、どう見ても『停戦』状態なんてありえないわけで。いつもの「平和とは次の戦争の準備期間である」と言っては身も蓋もありませんけど。
その意味でそもそも現実に存在していないなにかを見つめようとする『シリア停戦監視団』というのは実は体を張った高度なギャグの一つということは出来るかもしれません。存在していないモノを監視する存在について。哲学っぽい。このお話おっかしー。


ともあれ、まぁシリアの現状は結局シリアの皆様にどうにかしてもらうしかないのでしょう。
『アラブの春』が最後に辿り着いた場所 - maukitiの日記以前の日記でも書きましたけど、やっぱり現状のシリアは現代国際関係におけるパワーバランスの一つの均衡点となっているわけだから。どちらもこれ以上手を出すことができずに、ただ見守っているだけ。アメリカ一極状態ではないある種の多極化世界を待望していた人たちおめでとうございます。これこそが待ち望んだ多極化世界の典型的構図であります。だからその前に国連をどうにかしなければならなかったのに。
毎日100~人位が死んでいくだけじゃ、こうした均衡点を崩すにはとても生贄が足りないのだと。