「私を倒しても第二第三の薄熙来夫妻が生まれるだろう」という恐怖の予言

に怯える人たち。


薄熙来氏の妻、起訴事実を認める 英国人毒殺事件 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで日本での報道はいつものことながら低調でありましたけど、すごく大騒動した割にあっさりした幕引きですよね。まぁ闘争後の後処理なんてそんなものだと言ってしまっては身も蓋もありませんけど。


What China’s Leaders Fear Most | The Diplomat
ちなみにこの一連の権力闘争劇について面白い見方をしていたのが次のお話であります。

What this analysis reveals — and what the case against Bo and his wife shows — is that political security for China's top rulers today has deteriorated so much that, in some crucial ways, they might feel that they are back to the bad old Maoist days. Elite disunity and vicious infighting is now the rule, not the exception. This cannot be reassuring news for a regime ruled by individuals whose daily nightmare is that they will one day become another Bo Xilai.

What China’s Leaders Fear Most | The Diplomat

毛沢東以降は抑制されてきたはずの『手段を選ばない権力闘争』への回帰ですって。今はまだルールの「例外」で済んでいるものの、いつか中国の政治指導者たちは第二第三の薄熙来夫妻が生まれるかもしれないことに怯えることになるだろう、と。


まぁ実際中国、というよりは共産党政権のどこでもそれは共通の宿痾ではあるんですよね。彼らはまさに『選挙』のようなルール化された手続きを経ないからこそ、その権力闘争劇はしばしば熾烈なものになってしまう。スターリンやらレーニンやらに代表されるソ連はなんかは言うまでもありませんし、中国だって以前までは同様だったのでした。彼らは全精力を掛けてライバルたち(あるいは前権力者)の腐敗と無能さをあることないこと全力で批判することになり、そして結果として長期的にはそうした国家は必然的に弱体化していく。彼らの続ける『改革』中毒という死に至る病。最近うちの国でも痛い目にあいましたよね。
訒小平さんはそうした権力闘争の不毛な争いに一定のルール(家族まで対象にしない、負けたら更迭するにとどめる)を導入することで、それを一般市民の目には映りにくい水面下での抑制された『権力闘争』を中国上層部に広めることに成功したのでした。実際、彼の政治舞台での失墜と復活の繰り返しの経験からするとそう考えるのも無理はありませんよね。


ちなみに同様に訒小平さんが導入した訒小平理論として、中国国民に対する中国共産党政府の正統性、というものがあるわけです。それまでのようなマルクス主義の実践こそを大義名分として彼らの正統性とするのではなく、自国の経済近代化と改革こそを進めるからこそ我々は中国の指導者たりえるのだ、と。
この辺は日本でもよく指摘されているように、中国が経済成長を実現させているからこそ彼らの政治的安定は保たれている、というお話に繋がるのでしょう。しかしその雲行きも怪しくなってきた中国経済の現状について。


訒小平さんが導入しそれなりに成果を挙げてきた路線が、現代に至りこうして二つ同時に危機に晒されているのはやっぱり偶然ではないのかなぁと思ってしまいます。現代中国のまさに基礎を築いてみせた訒小平の時代のおわり。まぁあの国で死後20年以上それが上手く機能していたというだけでも十分すごいものだと感心せざるをえませんが。
じゃあこの次は一体どんなルールが中国上層部を支配していくことになるんでしょうね? 
うちの国に迷惑が掛からない限りは他人事として生暖かく見守って生きたいと思います。むりそー。