まるでイスラエルの対米戦略のように

危機を煽ってアメリカを引きずり出す私たち、という風景について。


米 中国に“尖閣は日米安保内”と説明 NHKニュース
ということで今尚現代世界における最強の手札をオープンした私たち日本であります。「日米安全保障条約の召喚、場の敵はすべて破棄される」まぁ強カードの宿命としてこちら側も生贄に必ず何かを差し出してもいるんですけども、やっぱり費用対効果としてはそこまで悪くないんじゃないかなぁと。
ともあれ、今回の件について「痛し痒し」というのはまさにその通りで、これで最後の一線を越える可能性はかなり低くなったものの、しかし同時にまた私たちが自分の問題を自身で解決できない、という悲しい現実を突きつけられてもいるんですよね。
常日頃は対話だのなんだの言っておきながら、結局こういう結末にたどり着いてしまう。この辺のお話については(GDP費での)低軍備政策・平和主義・憲法九条との矛盾としてよく語られるお話ではあります。まぁ個人的には、大多数の日本人が本気で求めている理想「平和国家」への現実的なアプローチの一種として中々良い方法なんじゃないかと思ったりします。吉田先生すごい。日本が戦後からずっと抱える理想と現実のギャップ。平和国家への理想と、しかし地政上常に勢力争いの均衡点に位置してしまう日本列島の悲哀。アメリカと手を切ろうが、中国になびこうが、中立へと走ろうが、結局は米中露に囲まれている限り構図的には何も変わらない。ニュージーランド辺りと交換できれば悩まずに済んだのにね。


さて置き――真偽はともかくとしても――やはり日本側が能動的にそれを望み画策したことによって、アメリカ側が思わず口を出さずにはいられなくなってしまった、という見方も当然出来るのでその辺については私たちはきちんと自覚しておくべき点なのだと思います。実際、中国さんの側にとってはかなりそうした思い「日本はわざと危機を煽ってアメリカを引きずり出した」という見方は強いのでしょうし。
ちなみに、そんな風に「わざと危機を煽ってアメリカを引きずり込む」戦略を堂々とやって見せている典型例があのイスラエルなわけで。あの国が「せいぞんせんりゃくー!」とイラン攻撃を煽ったりするのは、イラン向けであると同時にやっぱり多分にアメリカ向けの脅しでもあるのです。そうすることでアメリカの関与を引き出そうとしている。
端から見て悪どいやり方だなぁと思わざるをえませんが、しかし翻って今回一連の私たち尖閣諸島の件でも同様に、そういう見方は成立してしまうわけで。
中国さんにそう思われるのは別に構わないとしても、アメリカ側の有権者にまでそうした印象が先行してしまうのはかなり日米関係にとってマイナスになりかねないので注意すべきではないかなぁと。現在までのように良くも悪くも「(日本なんて)どうでも良い」と思ってくれているなら結果としてはそう悪くない方でしょう。ちなみにイスラエルさんはものすごく気を使っていて、あの手この手のロビー活動でそうしたイメージを持たれない様に懸命に努力しているわけです。一方ではアメリカの関与を深めるように働きかけながら、しかしもう一方では「イスラエルの都合によって」という印象を隠蔽するのに必死になっている。
やはり歴史的に見てもあの国の人々は「自分とは無関係な(正義のない)戦争に巻き込まれる」ことをとても嫌う国だからこそ。(いやまぁ「なに自分のこと棚に上げて言ってるんだ」とか「そんなの何処の国だってそうだろう」という突っ込みについてはその通りなんですけども)
だからもし今回の件で中国さんが米国内でロビー活動をしようとするならば、長期的にはそうした方向に持っていこうするんじゃないかと思います。日本の側では「アメリカに支配されている」と考えられている一方で、あちらで「日本はアメリカを利用している」というのは貿易摩擦時代を頂点にかなり言われていたお話でもありますよね。「アメリカは日本の番犬様であります」なんて。


賛否両論ありますけども、しかし今はまだ効果があるし、そして同時に私たちもそのカードを必要としてもいる。出来ることならこれから末長く使っていけるように政治家の皆さまには頑張っていただきたいものです。