『野蛮人』に対抗するたったひとつのさえたやり方

(敵も人質もまとめて)さーちあんどですとろいや!


アルジェリア人質救出作戦に各国から批判、人質の乗った車両を攻撃か 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで日本人も見事に巻き込まれたアルジェリアさんちの事件。いやぁフランスのマリ軍事介入からのほぼ直接的なコンボがこうして見事に決まったということで、みんな大好き平和主義とあわせてそちらへ怒り沸騰かと思いきや、やっぱりアメリカさんが相手じゃないからかイマイチ盛り上がりに欠けていてなんだか複雑な気分に。

 救出作戦の混乱の中で脱出に成功した北アイルランド(Northern Ireland)出身のスティーブン・マクフォール(Stephen McFaul)さんは、人質が乗っていた数台の車両に向けてアルジェリア軍が攻撃してきた話しているという。

 アイルランドのエイモン・ギルモア(Eamon Gilmore)外相は米CNNテレビに、アイルランド旅券でアルジェリアに入国していたマクフォールさんが脱出後に妻に語った話として、武装勢力が人質を移動させようと車に乗せていたときにアルジェリア軍の攻撃が始まったと語った。5台の車のうち4台が爆撃され、残る1台に乗っていたマクフォールさんは混乱に乗じて逃げたという。

アルジェリア人質救出作戦に各国から批判、人質の乗った車両を攻撃か 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News

ともあれ、もちろんまぁ私たちの基準からすれば「やり過ぎ」という見方は当然なわけですが、しかしじゃあそんな誤爆というよりは無差別攻撃のような対応が実際に「効果がない」のかというとそうでもないわけですよね。それこそ普遍的な教訓として「テロリストとは交渉しない」なんて言われているように。そして今回の件はその更に一歩先を行く教訓を示してもいる。


いわゆる『野蛮人』に脅迫された時にやってはいけないことは?
――答え「弱さを見せてはならない」


ということで一般の先進国のように確固たる政府の支配力(正当性)が確立されていない国々では、しばしば、人質を助けるはずの軍隊はむしろより危険な存在となるのです。危機に瀕しているのは人質だけじゃなく、脅迫されている政府の方も同様なのだから。ここで引いてしまったら元々危うい支配力しかない彼らにとって、ダム決壊の一刺しとなりかねない。なので身代金目的だった方がまだマシだったのでしょう。しかし今回はそうではなく、犯人たちはまさに政治的にアルジェリア政府までをも脅してしまった。
そしてアルジェリア政府はその脅しを正面から受け止められるほど強くもなければ、かといって欧米からの介入を待つほど弱くもなかったのです。かくして、今回のマリに関わる危機で、最初に表われた野蛮人たちを、アルジェリア政府は「正しく」対応することになった。もっと言えば、その「覚悟」を目に見える形で証明して見せた。
「二度とこんな真似をさせないようにしてやろう」「マッチョな俺達は人質なんかでビビるタマじゃないぜ」なんて。
その意味では今回の構図について、見せしめ、というのはおそらく二重の意味で正しい指摘でもあるのでしょう。
犯人達は「見せしめ」として天然ガスプラントの民間人を襲い、そして政府側も「見せしめ」として武力鎮圧して見せた。いやぁすくえないお話です。


もちろん私たちは人命優先するべきだとその論理を批判することはできます。それでも(潜在的に弱さを内包する)当事者たる彼らへ反論し説得するのは非情に難しい問題でもあるわけです。実際、そのやり方は長期的に見れば間違ってないとは言い切れないんだから。もしかしたら今回の対応が『次の』被害を減らすことに繋がるかもしれない。少なくとも彼らはそう信じている。
……まぁ繋がらないかもしれませんが。




今回見事に巻き込まれてしまったように私たち日本も決して他人事ではない、フランスのマリ介入にも絡むエネルギー安全保障の問題や、資源開発に伴って上昇していく政治的リスクについての適当なお話は次回辺りに。