誰もが他人事ではない故に他人のフリをするしかない

認めることもあからさまに無視することもできない。そんな国際政治における大人(?)の振る舞いについて。


フォークランドの住民投票、英領帰属支持が圧倒的多数 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ということでフォークランド住民投票があったそうで。アルゼンチン出身の法王と併せて、何故かこの時期になって色々盛り上がっているなぁと。イギリスさんちで住民投票というと、どちらかというと北アイルランドスコットランド絡み*1辺りなのかなぁと思ったりもしますが、良く解らないので詳しい方是非。

【3月12日 AFP】南米アルゼンチン沖フォークランド諸島(Falkland Islands、アルゼンチン名:マルビナス諸島、Islas Malvinas)で10〜11日、英国への帰属の是非を問う住民投票が行われ、英領帰属の支持票が圧倒的多数となった。

 政庁所在地スタンリー(Stanley)の選挙管理担当者によると、住民投票では諸島の全有権者1672人の約92%が投票し、このうち98.8%が英領帰属を支持した。反対票はわずか3票だったという。

フォークランドの住民投票、英領帰属支持が圧倒的多数 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

しかし100%じゃなくって良かったですよね。某独裁者じゃあるまいし民主的投票で100%信認なんて絶対にありえないわけだし。むしろこの三票に島民は感謝すべきじゃないのかな。


ともあれ、じゃあ民主的投票だから尊重すべきかというと、やっぱりまぁそういうお話ではまったくないわけですよね。その意味でむしろ、今回の件でアルゼンチンさんが仰っているように「まったく意味がない」というのはその通りであります。結局のところ住民投票はまさに今のイギリス系住民の現状肯定でしかないわけで。これと同じ事を私たち日本が竹島北方領土でやられたら、きっとアルゼンチンさんと同じ事を言うことになるでしょう。
むしろそんなことを公式ルールにしてしまったら、ならばウチもウチもと、世界中で大混乱となってしまう。自治権というものの背景となる、民族や言語は世界に一万以上存在している一方で、国家はせいぜい二百ほどしかないんだから。
――かといって「民主的手続き」としてはそれなりに筋の通ったやり方でもある住民投票の結果を完全に無視するわけにもいかない。まさに民主主義国家に生きる私たちだからこそ。


完全に認めることもあからさまに無視することもできない。それを聞かされても、せいぜい「ああ、そう……」と愛想笑いをする事くらい。
いやぁメンドくさいお話ですよね。
かくして第三者たる私たちは多くの場合で(よっぽど明確な正統性がない限り)どちらの側にもつかない「中立」という立場を取ることになるのです。アメリカさんちの原則が有名ですよね。「他国の領土問題にはどちらにも介入しない」それは他国の争いに巻き込まれないという理由と同時に、どちらかに肩入れすることによって自国の藪蛇になることを恐れるからでもあります。だってまさに下手に手を出して、そのどちらかかのやり方に肩入れしてしまったらほぼ確実に将来的に自分の身にも降りかかってくることになるだろうから。
その自決権をめぐる議論について。結局、誰もが他人事ではない故に他人のフリをするしかない。




まぁ最初にも書きましたけど、何でイギリスさんちはこんなことやっているのかなぁという疑問の方が強いお話なんですよね。それに国際関係上大して意味がないことは「あの」イギリスさんは当然解っているだろうし。逆に現状ある連合王国が分裂の危機――それを賢明にも容認してきた――にあるイギリスさんだからこそ、という見方もできるんですけど。俺達はきちんと分裂まで認めているんだぜ、という多分に自虐的な――あるいは民主主義政治に心中という感じのポーズ。なんというか体を張っているなぁと生暖かい気持ちに。
ぶっちゃけ可能性として高そうなのは、何となく住民が暴走してしまったとかその辺りな気はしますけど。政治的茶番といってしまってはアレですけども、私たち日本人はあまり笑えないので以下略。