『リンカーン』見てきた

スピルバーグリンカーン奴隷解放ゲティスバーグ→あのオハマビーチばりのピケットチャージが見られる!
と思ったら肉肉しい戦争シーンほとんどなくて悲しかった。スピルバーグめ。おわり。




でもそれだけじゃ寂しいし、何か適当なことでも書いておけば誰かがさんかく位はくれるかもしれない。
ということで以下ネタバレ。



























神話ではない現実政治としての『合衆国憲法修正第13条』 - maukitiの日記
以前の日記でも書いたように、まぁ概ね上記戦争シーンが無いことは解っていながら観にいったものの、まぁ思ったより面白い映画になっていたなぁと。日本で受けるかどうかはまったく解りませんけど。
タイミリミットギリギリまで続く、手に汗握るリンカーンさんのドキワク票読み騒動。ええ、こういうのも大好物です。


やはり上記日記の元ネタとなった冷泉先生のコラムでも指摘されている通り、各所に配慮された内容ではありました。その(現代での米国大統領選挙戦の時期を避けた)公開時期に始まり、奴隷解放に至ったリンカーン自身の政治思想の形成期や、二期目となる1864年選挙戦の勝利、あるいは南北戦争の開戦事由そのものについて、南軍だけでなく北軍内での分裂とか。
ミュンヘン』などでは思いっきり空気読まないことをしていた監督ではありましたけども、さすがに自国の政治問題に関してはきちんと配慮するのだなぁと、でも仕方ないよね国家のタブーってどこにでもあるわけだし。


ともあれ、やっぱりもう一人の主役はサディアス・スティーヴンスさんだろうなぁと。「理想の為に腐敗した妥協を重ねた」リンカーンさんの暗殺後、南部に対しての報復的な南部再建をしていくことになる共和党急進派のリーダーの一人。議会での矢面に立つだけあって、ものすごく出番多いしかっこいい。
所謂『レコンストラクション*1』をめぐる、先送りされたはずの穏健派と急進派の争い。
で、その危ういバランスは見事にリンカーンさんが暗殺されてしまうことで崩壊してしまうのでした。いやぁ暗殺っていつの時代もロクなことになりませんよね。
――結果として、急進派による南部諸州を『再建』するはずのその計画は、実際には旧弊を温存するどころか差別感情をまた新しい形で『再建』してしまうことになる。まぁその意味では暗殺者の思惑は達成されたと言ってもいいのかもしれません。奴隷解放云々ではなく、まさにこの失敗こそが、現代アメリカまで続く差別感情の根本にあるわけだから。
そう見ると、映画のラストで憲法修正案の原本を手に「妻」と一緒に素朴に喜ぶスティーブンスさんではありますが、その将来がとっても悲劇的な結末に終わってしまうことを考えると色々意味ありげだよなぁと。


ともあれ、その前(戦前の政局)でも後ろ(再建の迷走)でもなく、ただその僅かな勝利の瞬間を切り取った「国家の英雄リンカーン」物語としては、やっぱり良く出来ていると思います。