再び泥沼な戦後復興の背中が

折角ああして足抜けができたはずなのに。


シリア危機でオバマ大統領のアジア戦略に暗雲
内政だけでなく外交でも「状況」に追い詰められるオバマさん。

 もしオバマ大統領がシリア内戦への米国のより直接的な関与を認める羽目になれば、1期目に描かれた大戦略は明らかに転換されることになる。この大戦略の主なポイントは3つある。

 第1点は、中東での新たな戦争は避けるというもの。第2点は「アジアへのピボット(旋回)」、すなわち、紛争が多くなかなか発展できない中東で資源を浪費するのではなく、世界で最もダイナミックな地域であるアジアへの対応に米国の力を集中させようという考え方だ。

 そして第3点は、米国内の経済・社会改革を通じて世界における米国の強さを再構築するという方針だ。大統領の言う「国内での国家建設」への注力である。

シリア危機でオバマ大統領のアジア戦略に暗雲

もしこれでオバマさんがシリア介入を決断するとなれば、その「変節」の顛末は前大統領であるブッシュさんと似た道を辿りそうで愉快なお話だよなぁと。本来はどちらかというと対外政策には消極的だったブッシュさんさんも、元はといえばあの『9・11』で何もかも変わってしまったわけで。
ただまぁ今回のシリアの化学兵器使用がそこまで重要なイベントなのかというとやっぱりそれはなさそうなので――ていうか単純に死んだ数だけで言うならこれまであった「ただの通常兵器による」内戦で数万人という人がなくなっている――個人的にはあんまり可能性としては高くなさそうだよなぁと。
朝日新聞デジタル:シリアへの軍事介入、米国人の支持率はわずか10%=調査 - ロイターニュース - 国際
こういうニュースもあるわけだし。おそらく米国人が逮捕されたとここ数日話題の北朝鮮の方がまだ関心は高いでしょう。
そんなハードルが高くなっている大きな要因の一つが、上記先で言及されていますけども、やっぱりここでシリア介入へと舵を切ることはそれこそオバマさんの大統領としての根本の大戦略を揺るがす事態であるわけですよね。
まさにあのブッシュさんの教訓への反発――中東での泥沼の戦争に嵌ってしまったこと、そして国内政治経済を置き去りにしたこと――こそがオバマさんの基本戦略であったはずなのです。ところがここでシリアに介入をすることはその二の舞を演じかねない。戦いに「勝つ」ことだけならばきっと簡単でしょうが、しかしその先にあるのは「終わりなき復興支援」という泥沼が再び。まだその悪夢の記憶は鮮明すぎる。
もちろんそんなことは当然解っていながらも、しかし状況の進行がオバマさんの選択を狭めていく。いやぁアメリカっていつも大変そうです。



ただまぁこうした構図って、冷戦以後の国際関係からするとまったくいつでも変わらないありふれた風景ではあるんですよね。
つまり、アメリカが軍を動かさなければ結局、私たち国際社会は何も出来ない。その面が全く裏目に出たのがあのイラク戦争だったわけです。私たちはアメリカが強引にでもやろうと決意したことを結局止めることができなかった。だって結局あのイラクの飛行禁止や経済制裁などは、ほとんどがアメリカ主導だったのだから。
そして、そんな10年前にあったアメリカの「暴走」が逆説的に証明しているのが、何も出来ずにただ見ているだけしかできない現在のシリアでもあるのです。もちろん最近のフランスのマリ介入のようにある程度までの規模ならば対応できるでしょう。しかし今回のシリアは桁が一つ上のレベルでそのリソースがおそらく必要となるわけで。そんなものを用意できるのはアメリカ以外にやっぱりない。


アメリカがやろうとしたことを止められないし、かといってアメリカ抜きで事を進めることもできない。
その時代は徐々に終わりつつあるとはいえ、しかし後しばらくはまだ続いていくのでしょう。かくしてアメリカが放置したツケは、結局アメリカ自身で拭く以外にない。望むと望まざると決断を迫られるアメリカ。今回のオバマさんのように追い詰められる米国大統領たち。


がんばれアメリカ。