否決しておいてよかった2011年のイギリス選挙制度改革

イギリスに第二の第三党の登場。二年前の国民投票の影響がまさかここに。



英国に「転換点」 地方選で反EU、反移民の小政党躍進 移民政策など修正不可避か+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
朝日新聞デジタル:英国独立党が3位躍進 反EU姿勢掲げ 英国地方議会選 - 国際
ということで与党が負けたまではともかく、「反EU」政党が躍進してしまったそうで。でもまぁ概ね規定路線ではありますよね。

 英国では長引く経済の停滞への不満を背景に、「移民に仕事を奪われた」「無料の医療や生活保護など社会保障のただ乗りは許されない」などと、反移民の声が高まっていた。UKIPは反移民の保守層に加え、「裕福なエリート集団」という印象がある現政権に対する低所得者層の反発を背景に躍進を果たした。

朝日新聞デジタル:英国独立党が3位躍進 反EU姿勢掲げ 英国地方議会選 - 国際

ユーロ圏に直接加盟していないイギリスさんちでさえ、そうした悪影響の余波はやっぱり受けても居るわけで。半ば(文字通り)対岸の火事となっているだけに――当事者意識が薄いだけに、その反発心はより強く出たりもするのだろうなぁと。欧州連合について、将来のことはよく解らないけれども、しかし今は確実にロクでもないことになりつつあるということはわかる。故に反対なのだ、という身も蓋もない民意。
まぁ「現在の様子」こそが選挙結果を決めるなんてこと、世界中の何処にでもありふれた構図ではあるのでやっぱりイギリスさんちを殊更に笑えませんよね。まさに私たち日本人だって身に覚えがあるわけで。「とくに現状が気に食わないからどうにかしてくれ」という気持ちで投票する人びと。そこに長期的展望や何か深い思慮があるのかというと、やっぱりそんなものあるわけないのでした。所謂『選考の時間的逆転』を克服できない私たち。理屈じゃねぇんだ!



――ともあれ、しかしこの程度の結果=独立党の躍進ならば、実の所イギリスさんちとしてはまだ許容範囲ではあるのだろうなぁと。
2010年の時の下院選挙でも話題になったように、イギリスの少数派に圧倒的に不利な小選挙区制度のことを考えると、三位あるいは二位で抑えられるならばどうにかなるでしょう。その意味で、その後ハングパーラメントの下で政権入りしたイギリス自由民主党の悲願であった「選挙制度改革」が、ちょうど二年前の2011年に国民投票で否決されたこと*1がここで大きな意味を持ちつつあるのは、なんだか皮肉なお話だよなぁと。
より少数政党に「平等な」議席を保障させる為の改革、強固な二大政党制を終わらせるという彼らの悲願。しかしそれは見事に有権者の無関心によって否定され、そしてそのダメージから自由民主党の党勢は衰退していくという踏んだり蹴ったりの結末。
ところが、あの時に否決しておいたおかげで、まかり間違っても(おそらくは)英国独立党が次の選挙で決定的に勝つことはほとんどなくなっている。
更に愉快な構図なのは、そんな「選挙制度改革」を主導したのが欧州連合に比較的宥和的な(第一の第三党である)自由民主党だったっていうのがまた。もしあれが通っていたら、おそらく今回の(第二の第三党である)英国独立党の躍進はよりシャレにならない事態へとなっていたでしょうし。



60年以上経ってもまだ答えが見つからないイギリス - maukitiの日記
さて置き、2017年までに「欧州連合脱退を問う国民投票」が控えているイギリスさんちではありますが、どちらにしても問題はそこまでに現状のユーロ危機が収束に向かっているかどうか、というお話であったのでしょう。もし危機収束してより良い方向に進むことがあれば、そのタイミングを狙って国民投票をすれば望む通りの結果が得られるだろうから。
ただ、こうして「反EU」政党が力を持ってしまうと、そのタイミングの選定への影響もやはりあったりすると思われるのでやっぱりあまり楽観できない状況なのだろうなぁと。


がんばれイギリス。