行動ターゲティング広告そのまんまな「悪しきバイアグラの違法工場」

バイアグラ大好き!」と見透かされている私たち*1



ニセのバイアグラの正体をファイザーが暴露、プリンター用インクや壁材が混入 - GIGAZINE
わー、こわーい。
よし! これからはバイアグラはきちんと正規品を買おう!

アメリカの製薬会社Pfizer(ファイザー)がネット上で偽バイアグラを販売するウェブサイトが横行していることに対抗し、新たにバイアグラ直販サイトを開設することを発表しました。発表によればネット上にある偽のバイアグラの中には不衛生な場所で作られたり、殺虫剤やプリンター用のインクが用いられているものも存在するとのことで、偽バイアグラ製薬現場として公開されている写真がかなり衝撃的なものとなっています。

ニセのバイアグラの正体をファイザーが暴露、プリンター用インクや壁材が混入 - GIGAZINE

まぁもちろんこうしたことは事実ではあるんでしょうけども、しかし同時にまた、解りやすいお話でもあるよなぁと。つまるところ、私たちがバイアグラを買う購入者であるからこそ、敢えてその偽造薬のヒドさを見せ付けられている。
――客観的に言ってその先にはより救えない、生命に関わる病気に対する『偽造薬』が出回りまくっているにもかかわらず。


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以前の日記でも少し言及したお話ではありますが、むしろ国際的に――特に情報格差の著しい貧困国において――その悪影響を見た場合、どう考えてもマラリア結核エイズなどの『偽造薬』のほうがずっと危険なわけです。まぁもちろん真剣に「立たなくて」悩んでいる人もいらっしゃるんでしょう。しかしそれでも、直接に命の危険があるわけではないので「飲まない」という選択肢は常に場合ある。しかし発展途上国の人びとにとっては、まったくそうではない。
――ところがこうして、敢えて、偽バイアグラの方を大きく喧伝し「故にバイアグラは当社の正規品をお買い上げください」とやるのは、まぁなんだかとても生暖かい気持ちになってしまうよなぁと。
いやまぁ理屈としては解るんです。だってそうした先進国の人であれば普通「命に関わる薬」について偽造薬を掴むことはほとんど無いといっていい。むしろ先進国に住む私たちにとってより「身近」にある偽造薬というのはこうした勃起不全治療薬だったりするわけで。バイアグラを筆頭に、シアリスやレビトラ等々。それはまぁ医師の処方ナシや、あるいは世間体を気にして、といった理由から先進国に住む私たちは正規品でないルートから入手しようとする。
だから今回のファイザーのやり方はとても適切なマーケティングであり啓蒙活動だと言うことはできるんです。だって幾ら死のうが知ったことではない貧困者の(偽造薬に苦しむ)現状を見せられても究極的に関係のない話でしかないんだから。先進国に住む私たちが買うのは、治療薬のニセモノではなく、バイアグラのニセモノなんだから。
故にこうして私たちは、まさにファイザーさんの手によって、偽バイアグラ工場のショッキングな不衛生さこそを見せつけられることになる。


そうは言っても、彼らだって営利企業な以上利益を最大化しようとするのは当然であります。僕も個人的なポジションで言えば、製薬企業にそこまでの社会的義務を付与するのは無茶な話だと思っているので、彼らがこうして偽造薬によって文字通り「死んで」いく発展途上の国の人間よりも、バイアグラを購入する先進国の人をターゲットにその不衛生さを宣伝するのは間違っていないと同意するしかありません。
偽の抗結核薬、発展途上国に拡散 研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ただ、それでも、発展途上国で蔓延する病気の治療薬ではなく、バイアグラなどのライフスタイルドラックの方の偽造薬の方をより必死に取り締まろうとする彼らを「容認」する事はできても、しかし積極的に肯定することもできない。


この辺りは製薬会社の投資開発費や、ジェネリック医薬品の問題、あるいはインドなどによる認可無しでの海賊版の医薬品の製造など、まぁめんどくさいお話ではありますよね。
結局行き着くのは、私たちのそうした偽造薬問題への無関心である、と言ってしまっては身も蓋もありませんけど。しかしこうして私たちが大好きなバイアグラだからこそ、元々あった無関心さから脱し、その偽造薬問題を現実の問題として捉えることも出来る。別にバイアグラに限った話では決してないはずなのに。
この点で、やっぱりファイザーさんばかり笑えないよなぁと。