中国共産党の必死の時間稼ぎ

「時間稼ぎ」だけならまだマシなんですけども。


時事ドットコム:「7禁句」、大学に伝達=言論・思想統制を強化−中国
ということで強化しているそうで。こうした出来事だけではなく、中国国内の人権・民主化運動家の人々の監視や抑圧も強まっているそうで*1、習さん政権になってからまぁ色々と「一歩」を踏み出しているよなぁと。

 【香港時事】11日付の香港各紙によると、中国当局はこのほど、北京、上海などの大学に対し、自由・人権などを意味する「普遍的価値」をはじめとする「七つの禁句」を授業で使わないよう指示した。関係者の間では、習近平国家主席率いる新指導部が言論・思想統制を強化し始めたと受け止められている。
 この指示は多くの中国の大学関係者が各紙に明らかにした。「普遍的価値」のほかに、「報道の自由」「公民社会」「公民の権利」「(共産)党の歴史的誤り」「権貴資産階級」「司法の独立」が禁句とされた。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201305/2013051100201&g=int

でもまぁ、彼らの立場からすると、そう禁止したくなる気持ちも解らなくはないんですよね。だって『中東の春』の顛末を見ると、ロクでもないことになるのは確実であります。あの春と称するモノが意味する所は結局、まさに上記「禁句」を打ち破ろうとした結果でもあるわけで。だからこそ彼らはその二の舞を心底恐れている。


ともあれ、しかしこうした措置が、中国という国家において殊更にヒドい措置なのかというと、別にそんなことないんですよね。だってそんな「自由」や「人権」といった概念は、中国という国家の歴史において元々備わってはいないんだから。
だからぶっちゃけてしまえば、こうした措置って現状維持でしかない。普段は単に見えていないだけ。
中国という国家にとって「政治」というものが民衆の手に渡ったことなど一度もない。それは常に権力者たち――現在では中国共産党の独占物であるのです。故に今回のことは別に何か変わったことが起きたというわけでもなく、(羽目を外す人間が増えたので)ただただ現状を再確認してみせた、ということでしかない。


ただこうした現状について、中国国民の皆さんが不満に思ってこなかったのかというとやっぱりそうではないわけで。前回それが最も盛り上がったのがあの(第二次)天安門でありました。
反日暴動の果てにあるもの - maukitiの日記
以前の日記でも少し書きましたけども、そんな中にあって国民の不満を見事に逸らしてみせたのが、あの訒小平さんの『改革解放』でありました。国民に対する――政治参加と引き換えの――経済の解放。結果としてそれはあの天安門の事件さえも押し流し、中国国民を金持ちへの道に熱狂させることに成功したのです。
しかしまさに資本主義の歴史が証明しているように、無限の成長物語も、全員が勝者となれる物語もあるはずなく、徐々にその熱狂も薄れてきてしまっている。かくして彼らは忘れていたはずの情熱を再び思い出しかかっている。
――その意味で、こうした言論・思想統制って結局、時間稼ぎにしかならないんですよね。
既にこのやり方では既に一度失敗しているんですよ。だからこそあの天安門が起きてしまったわけで。いわんや昨今の情報革命の時代をや。


ということで中国共産党という権力者たちに真に必要なのは、こうした締め付け強化ではなく、それこそ訒小平理論のように中国の国民たちに政治参加を忘れさせるだけの「何か他に熱狂できるもの」を提供することなのです。そこで何か画期的なモノが用意できなければジリ貧であります。
その一つが、上記以前の日記でも書いた『反日感情』でもあるわけです。ただまぁこれは煽りすぎると、中国政府自身さえも日本に対してまったく妥協ができなくなる=反政府運動に繋がりかねないという劇薬でもあるので、現在においてそこまで使い勝手の良いものなのかというとそうでもないんですけど。
果たして習さんは訒小平さんに続く、画期的な別の何かを見つけることが出来るのか? 乞うご期待。




時間稼ぎに必死な彼ら。でもまぁ下手に『反日』走るよりは、私たち日本にとっては都合がいいのかもしれませんよね。
中国に対してひどい話だと言ってしまえばその通りなんですが、実際私たち日本における「意識の高い」人たちにしても、中国のそれよりも欧米諸国の人権侵害や民主主義政治の瑕疵の追求に熱心だったりするわけで。世界第二位の経済大国の中国のことになるとまるっきり沈黙してしまう私たち。
しかし、こうして中国国内で行われている抑圧は、上記のように『反日』に誘導されてしまうよりはよっぽど私たち日本にとってベストではないにしろ限りなくベターでもあったりもするのでそんな不誠実さは全て悪というわけでもない。
で、そんな中国国内の事件に対しては、利害関係にない欧米ジャーナリストの方がしばしば熱心に報道すると。


いやぁ愉快な構図ですよね。