寛容な社会だからこそ、暴動が起きる余地も生まれる?

ストックホルムは燃えているか。


スウェーデン暴動、5夜連続 移民問題浮き彫りに 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで六日目に突入したそうで。まぁあちらの伝統では七日目には「休む」のが二千年以上続くのが定番なので、今日明日辺りには収束するんじゃないかな。今適当なこと言いました。

暴動の発端は、住民の8割を移民が占めるヒュースビー地区で前週、なたを手にした地元住民の男性(69)を警察官が射殺したことだとみられている。警察は自宅に逃げ込んだこの男性を「説得しようとした」末に射殺し、正当防衛を主張。地元活動家によるとこれを受けて、これまで警察の残虐な対応にさらされてきた若者たちを中心に怒りが爆発したという。

スウェーデン政府は難民を積極的に受け入れており、さまざまな教育プログラムも提供している。しかし、大多数の移民にとってスウェーデン語の習得や就職は壁となっており、今回の暴動は移民がスウェーデン社会にうまく溶け込めていない事実を改めて浮き彫りにした。同時に、合意形成型民主主義の小国が、移民問題解決に向けて方針を統一できていない現状も明らかになった。

スウェーデン暴動、5夜連続 移民問題浮き彫りに 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News

ともあれ、まぁ昨今の欧州ではよく見られるあるあるパターンではありますよね。
英兵士刺殺の容疑者、当局は事件前に存在把握か イスラム過激派活動に参加 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
「社会への溶け込みの失敗」という点では先日のボストンマラソンのテロや、最近のイギリスのそれなんかも近い所にあるのかもしれません。寛容な移民受け入れ政策の顛末。こうした暴動や事件がまたドミノ倒しのように、次は移民排斥のような極右政党の支持へと繋がってしまう。そしてそんな空気感が移民社会へと伝わり、また一触即発の状態が続くと。
なんという負の連鎖でしょう。


A fascinating map of the world’s most and least racially tolerant countries - The Washington Post
先日少し話題になっていた、各国別の『隣人としてのガイジンに対する寛容度』の調査研究がありましたけども、あの調査を見た時も少し思ったんですが、これってむしろより社会が寛容だからこそ逆説的に「暴れる」余地が生まれてしまっているんじゃないかなぁと。優しい社会であるからこそ、そのハードルを越えることも容易であるのだと。
この辺は、独裁者の強権の程度と『民主化』運動の成功率、という有名なお話と同じ構図ではないかなぁと少し思うんですよね。
アラブの春』でもそうだったんですが、民主化運動が高まるのって、その独裁者の強権具合が高い方が民主化運動が進むのではなくて、むしろ逆なんです。つまり比較的「優しい独裁者」であるからこそ、そこには市民・社会団体が生まれる余地ができ、それは長期的な民主化運動に繋がっていく。だから『アラブの春』でも、比較的優しい独裁者たちから倒されていったわけで。
それとは逆に北朝鮮や中国のように政府の支配機構がものすごく強固な場合は、むしろそうした民主化運動はまったく進まないのです。


こうした構図と同じように、一般に寛容とされる優しい=最低限のラインが保障されたヨーロッパ諸国だからこそ「不満を持った移民による暴動」は起きてしまう。もし、本当に厳しい(人権を無視した)取り締まりや、あるいは(今日明日のパンに苦しむ)追い詰められた生活をしていれば、それこそそんなことをやっている余裕さえないわけで。仮にあったとしても事前に潰されてしまう。
もちろんだから我慢すべきだと言いたいわけではまったくなくて、彼らは相対的に見た場合かなり恵まれた移民受け入れの社会にありながら、むしろだからこそ、こうした暴動が頻発してしまうんじゃないかと。おそらく短中期的に見て、こうした構図を完全に無くすことは不可能でしょう。


そんな風に考えると、やっぱりとっても救えない『多文化主義の失敗』の現状でありますよね。
結局、移民に優しくしない方が暴動を防げるかもしれない、だなんて。そしてこの考え方が行き着く先は「だったら移民なんて受け入れない方がいい」という着地点であるわけで。けどそんなことを民主的な現代社会で完全にやり抜くのも難しい。
かくして半死半生の多文化主義にジレンマを抱えたまま、いつか将来手を取り合えることを夢見ながら、どうにかこうにか折り合いをつけてやっていかなくてはいけない私たち。
――しかしそれには当然、こうやって血と金を払い続けなければいけない。そして当然一部の人たちはそこに疑問を抱くようになる「一体いつまでこんなことを続けなければいけないのだ?」なんて。




みなさんはいかがお考えでしょうか?