一体性の確保に苦しむ欧州連合

経済問題があるから苦しむことになるのか、それとも元々一体性の確保に苦労していたからこそ経済問題でも苦しむことになったのか。鶏と卵。


東京新聞:シリア武器禁輸解除 EU共通政策崩れる:国際(TOKYO Web)
昨日の日記でも少し触れたEUのシリアに対する「武器禁輸解除」のお話ではありますが、なんだかその内実はとっても愉快なことになっていたそうで。

【ロンドン=石川保典】欧州連合(EU)が、二十七日の外相理事会でシリアに対する武器禁輸解除を決定したことで、反体制派に武器を提供するために解除を主張してきた英仏両国は、武器提供への「フリーハンド」を得た。シリア問題をめぐるEUの共通外交政策は、事実上“崩壊”したことになる。
 ロイター通信によると、十四時間に及んだ理事会で、英仏は武器禁輸措置を六月以降も延長することを強く拒否。共通外交政策の決定は外相理事会での全会一致が必要で、解除に一貫して反対していたオーストリアのシュピンデルエッガー副首相兼欧州・国際関係相は「妥協点を見いだせず極めて残念だ」と、“拒否権”を行使した英仏へのいらだちを隠さなかった。

東京新聞:シリア武器禁輸解除 EU共通政策崩れる:国際(TOKYO Web)

ただ欧州連合が武器禁輸を「解除した」というよりは、むしろその枠組みが「崩壊した」という方が近いのだろうなぁと。
http://japanese.ruvr.ru/2013_05_28/114449229/
この辺りについてロシアさんちも身も蓋もなく「自然死」という言い方をしていますが、まぁ概ね正解ではあるのでしょう。
オーストリアチェコが解除に反対する一方で、英仏が強硬に解除を主張し、結局両者の溝は埋まらなかったと。かくして元々今回の協議に際してあった三つの選択肢――「禁輸延長する」「禁輸解除する」「限定的禁輸解除」――の内のどれか一つにさえ意見を纏めることができなかった欧州連合の彼ら。
――それでもこの協議においてはドイツがかなり役割を果たしていたそうで。読売本紙の方に記事としてあるんですが、

今回の協議が決裂すれば、武器禁輸措置と共に、アサド大統領の資産凍結など経済制裁も五月末に失効してしまうため、「ドイツが懸命に説得に動き、最終合意にこぎ着けた」という。

まさかのドイツさんちのがんばり。でも実際、欧州連合にもっともリソースを割いているのがドイツさんちなんだから理解できないお話ではありませんよね。
EU、反ダンピング課税で対中融和探る 外需けん引役期待で  :日本経済新聞
まぁ一方でドイツさんちも、現在欧州連合内で大きな論争となっている「中国製太陽光パネルへの課税」の反対の旗頭にもなっているんですけど。


シリアと欧州連合についての構図としては、結局のところロシアに対する微妙な距離感がこうした論争を分裂させる大きな要因ともなっているのでしょうね。シリア政府側を刺激するということはつまり、それを援助するロシアを刺激することになってしまいかねないから。そうするとシリア内戦をめぐって益々欧露関係がめんどくさいことになってしまうのは確実であります。この辺アメリカさんが主導してくれれば楽だったのにね。しかしオバマさんは案の定矢面に立つ気はまったくない。
どちらにしてもシリア内戦で実際に苦しむ現地住民の人々のことは置き去りにされているのは確実なので、やっぱり大変救えないお話ではありますが。


ともあれ、欧州連合の一体性に悩む彼ら。経済だけでなく政治の面でも色々大変そうではありますよね。弱り目に祟り目。こうなるとまたイギリスさんちでの脱退投票が盛り上がってしまいそうです。
がんばれ欧州連合