かつて禁酒法が通った道

みんな大嫌い『児童ポルノ禁止法案改正案』についての適当なお話。


「嫌だから規制する」なのか──児童ポルノ禁止法改定案、その背後にあるもの (1/3) - ITmedia ニュース
ということでまた例の児ポ法のあれが盛り上がっているそうで。まぁなんというか、いつか見た禁酒法そっくりな風景だよなぁと。

 この改定案は本来、「児童を守ろう」という善意で提案されたものだとは思います。被害者の存在する実写の児童ポルノを禁止する。幸森さんも語っているように、このことには非常に大きな意義がある。ですがそれを空想の領域まで拡大することに含みをもたせる必要はあるのかどうか。ここは論議が必要だと思います。

 「児童ポルノの単純所持の禁止」と、その適用範囲の「漫画やアニメ、CGへの拡大」。この2つの規制強化が組み合わさることの本質的な意味と、弊害の大きさに改訂推進側は気がついているのでしょうか。本当のところは、“よく分かっている”のかもしれませんが。

「嫌だから規制する」なのか──児童ポルノ禁止法改定案、その背後にあるもの (1/3) - ITmedia ニュース

個人的にこの構図を見ていて、勘違いしている人が多そうだなぁと思うのは、「児童を守ろう」という部分を突き崩せばこの法案を撤退させることができる、という辺りではあります。だから「実際の児童は救われない=論破終了俺たち大勝利!」という所で終わってしまう。でもそれって推進派の持つ二つのエンジンの内の一つしか潰せていないんですよね。
故に残ったもう一つのエンジンによって、その勢いは――多少弱まっても――なかなか止まらない。「(新しく)低俗なモノは規制し、(古き)善き人民を取り戻そう」という古今東西どの国にもある、善意溢れる保守派政治家みなさんの願望の一つ。
かつてそれは小説やテレビやラジオだったりしたように、今は漫画やアニメだったりすると。


そもそも論として何でこの改正案が根強く生き残っているのかって、そりゃ賛成する人たちが少なくないからであります。更にはそれが右にしろ左にしろ――保守にしろ革新にしろ、そのどちらからも賛成されているからこそ、その機運は中々衰えない。
一方は心底善意から「児童を守ろうと」こうした法案を推し進め、そしてもう一方は心底善意から「伝統的な価値観」を取り戻そうとしてその法案を推し進めるのです。右と左が珍しく手を取り合えている。だからこそ、その流れは強力でもあるのです。

幸森 いや、信念はあるとは思いますよ。心の底から信じている。自分が不快に感じるものの、存在自体を完全に抹殺したいという人が一定量いることは確かだと感じます。問題は、その人たちが世の中全体を代表しているわけではないんですよね。それが議員立法という形で通ってしまうと、世の中全体の法律になってしまう。

「嫌だから規制する」なのか──児童ポルノ禁止法改定案、その背後にあるもの (1/3) - ITmedia ニュース

ここまで議員の皆さんに悪意があるとは思いませんけども、しかし実情はおそらく近いところにあるのでしょう。「存在自体を抹殺することで善き日本人が生まれる」と彼らは確信している。


児童ポルノ禁止法案改正』って行き過ぎた進歩的な面ばかり注目されますけども、しかしその実とても保守的で退嬰的な側面があったりするのを見過ごしてはいけないのではないかなぁと。
「児童を守ろう」というのはあくまで建前でしかなく、むしろ本音としては「低俗なものを規制したい」という方である。こうして突っ込みどころ満載な「児童を守ろう」という建前を前面に押し出すことで被害担当艦とし、そこをある程度まで妥協しつつその裏では本筋を狙う。
ともあれ、やっぱりこれってあの1919年アメリカの『禁酒法』とそっくりな手法ですよね。そんなかつての右と左の悪魔合体の結果があの有様だったわけなので、その意味でも、現代日本ではどうにかこうにか踏みとどまって欲しいと思う次第ではあります。


もちろんその「低俗さ」について社会でどこまで許容するかという問題は、それはそれでまた別で議論しなければいけないお話ではあるのでしょう。しかしそれをこうして迂回した形で規制しようとするのは、まぁあんまりフェアなやり方ではありませんよね。
みなさんはいかがお考えでしょうか?