地元政治家が選挙区対策に地元利益を優先しないわけがない

我らが日本の欠陥というよりも、むしろアメリカさんちの方がより大きな問題となっているお話。アメリカ合衆国が建国以来抱える『自由貿易』というジレンマ。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38108
ということでTPPのこともあって単純に他人事だと笑っていられないアメリカさんちの貿易交渉における内部闘争であります。でもまぁぶっちゃけアメリカという国の建国以来抱えるジレンマではありますよね。こうした内部闘争が分裂してしまうと、かつてのような内戦まではともかくとして、しかしそれまで各国間で地道に積み上げてきた貿易交渉そのものが一気に崩れかねない。こうした懸念はやっぱりTPPでもかなり言われていたりするわけで。
私たち日本が自由貿易をめぐってその関税撤廃などで揉めているように――あるいはそれ以上に、アメリカさんちの内部でだってそれはもう揉めまくっている。彼らのその争いは、日本の比ではなく、それはもう建国以来続く伝統行事であるのです。
自由貿易の世界代表のような顔をしておきながら、しかしその実内側では世界でも最も議論が分かれてしまう愉快な国。

 相次ぐバイアメリカ法は、オバマ政権にとって貿易交渉におけるジレンマになっている。

 一方では、米国の交渉担当者はこれを利用し、自国映画産業の保護を求めるフランスの要求など、EU側が求める適用除外に対する報復として、米国の調達の切り離しを模索できるかもしれない。他方、バイアメリカ法は、米国政府が欧州での自由化推進を訴えることを難しくし、米国を守勢に立たせる恐れもある。

 通常は、州政府の間で貿易協定締結に対する支持を増やすのは米国通商代表部の仕事だが、それが成功するかどうかは不透明だ。

 バラク・オバマ大統領の民主党にとって政治基盤の重要な要素になっている労働組合の多くは、バイアメリカ法を支持している。組合は貿易協定に懐疑的で、調達を開放する積極的な試みが見られた場合には、組合の反対が燃え上がり、連邦議会で協定が承認される見通しに問題を突き付けるかもしれない。

 憲法上、州の財布の紐を管理する権利は州政府にあると定められていることから、米国の貿易交渉担当者は、説得する以外、州レベルでの変化を強要する力をほとんど持っていない。また、オバマ政権は、輸送インフラのような分野で連邦政府の調達規制を緩和するかどうか決断しなくてはならない。

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この問題を決定的に複雑にしているのが、合衆国憲法が定めているように、アメリカでは『議会』が貿易交渉の是非を決めるという点であります。
つまり議員一人一人の票がそれを左右する。せめて日本のように党議拘束さえあればもう少し話は簡単だったかもしれない。しかし「自由の国」たるアメリカでは議員一人一人が地元利益に従って投票することになる。
まさに上記「バイアメリカ法」が抱える問題のように、彼らはその利害調整を州単位で行わなければならない。
――つまりこの構図において彼らは、地域代表である故に、議員たちは選挙区対策として地元利益を優先しないわけがない。彼らは地元の産業を守る為に、しばしば保護主義的な政策を採るのです。そしてそれは議員同士の「借り貸し」(あの法案では自分に協力してくれたから、別の法案ではお返しに協力しよう)によって、次々とその障壁は広がっていく。みんなで仲良く保護主義政策の輪。
議員に任せていたらこんなもの解決するはずがない。地元から選出された議員が、自由貿易を推進するなんていうことは根本的な自己矛盾である、とさえ言えるてしまう。でも連邦国家たるアメリカからその権限を奪うことなんて出来るはずもない。
だからこそ、その為に『アメリカ合衆国通商代表部』というモノができたわけですけども、やっぱりこれも色々あったりして略。


まぁこんなことをやっていたら揉めるのは当然ですよね。かくしてアメリカという国は、歴代大統領は対外的には自由貿易を推し進めていながら、しかしそのお膝元の議会では世界でも最も貿易障壁が、複雑にすることで一見「そう」見えないように、堅固に築かれたりするのです。
まぁそれは多分に他の国から圧力を受けない――アメリカにはアメリカという外国が居ない、というお話でもあるんですけど。海の向こうの国から圧力を受けないスーパーパワーってすばらしいなぁ。

 一方、フレデリックではヤング氏が、EUと米国が交渉を開始しようとする中で、メリーランド州のバイアメリカ法が確実に生き残るようにしようと躍起になっている。

 「世界中で非常の多くの国が、我々が競争するのを妨げる保護主義的な措置を取っている」とヤング氏。「絶対にバランスが必要だと思う」

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歴代大領が抱えてきた自由貿易を巡る議論からやっぱり逃れられない現大統領。しかもこんな中国という国家が台頭している(まぁその前は私たち日本がそのポジションに居たんですけど)時代だから余計に。
がんばれオバマさん。