「腐敗した独裁者」を廃した後にやってくる世界

フィリピンの現状が教えてくれるもの。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39162
ということで台風で大きな被害を受けたフィリピンさんちであります。まぁ毎年のように台風で大騒ぎする私たちニホンにとってもやっぱり他人事ではないわけですけども、しかしその「貧しさ」がより脅威を強調することになっているのは事実なのでしょう。それこそ私たちもあの『3・11』で直面したように、その緊急事態でこそ、その社会の持つより本質的な内面が見事に――良くも悪くも――露呈する。

 フィリピンの著名な社会評論家たちはもう何年も前から、見かけ上の経済的成功に調子に乗ってはならないと警告してきた。

 彼らいわく、フィリピンは今でも、ごく少数の人のために運営されている寡占体制だ。経済成長はこの国にはびこる貧困をほとんど減らしていない。ブリキの屋根やそれよりひどいもので猛烈な強風や高潮から身を守るしかない人たちにとっては、改善する経済の恩恵は訪れるのが遅すぎた。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39162

まぁフィリピンについては以前も少し書いたんですが、
フィリピンの二の舞を避けられるだろうか? - maukitiの日記
あのマルコスさんという最悪の独裁者の時代からそこまで進歩したのかというと、上記引用にもあるように、ぶっちゃけそこまで進歩しているわけでもないんですよね。現代でも尚、致命的な「腐敗」と「汚職」が日常風景にあるフィリピン。
台風被災者がコメ倉庫に殺到、壁倒壊で8人死亡 フィリピン 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News
フィリピン台風被災地で略奪、治安部隊を派遣 写真30枚 国際ニュース:AFPBB News
まぁ私たちの価値観から見てそんな暴動っぷりを笑うのは簡単ではありますが、これは独立の英雄であるマルコスさんが築き上げた政治体制が現代でも尚、存続し続けているフィリピンの現在を象徴する構図でもあります。経済成長から――そしてそれはかの国においては限りなく「権力者とのコネ」という意味でもある――取り残されたままで、台風から身を守る術もなく、そしてその後は簡単に暴動が起きてしまう。


こうしたフィリピンの現在でも尚続く腐敗の構図を鑑みた上で、現在進行形で起きている革命やら政変やらのアレやコレの国の現状を考えると、やっぱり前途は多難だよなぁと思ってしまうんですよね。つまり、幾ら「悪い独裁者」を廃してみたところで、根本的な政治社会構造を変えられない限り、やっぱり同じ構図が続くことになる。
毒に対抗するのは、ただ薬というわけではなくて、実はまた別の「毒」で対抗することだってできるわけで。毒をもって毒を制す。ある腐敗を一掃しようとしたら、その隙間に別の腐敗が。
あの頃から何も成長していないのかと言えば、やっぱりそんなことはないでしょう。フィリピン経済は「ようやく」離陸を始めるまでに至っている。しかし、それでも、変わっていないことも沢山ある。腐敗の構造。フィリピン政治に伝統として残る、寵愛に対する恩義、血縁の絆、権力者とのコネこそが全て。それはまぁ近代政治経済のシステムとは限りなく相性が悪いわけで。この根本的な制度をどうにかしない限りいつまでたっても同じことを繰り返すことになる。
植民地支配が真に恐ろしい理由 - maukitiの日記
以前の日記でも書いたお話ではありますが、国家における「制度」の持つ力ってそういうことなんですよね。表面的な部分を変えたとしても、しかしより奥にある仕組みそのものを変えない限り、必ずまた同じような流れにたどり着いてしまう。フィリピンなんてあの『ピープルパワー革命』からもう25年も経っているのに、しかし現状といえばご覧の有様なわけです。



まぁこの辺りは『アラブの春』の将来を占う上でも、一つの指針の例となったりするのかなぁと。根本的に『制度』を変えられなければ、おそらく、同じ道を辿ることになる。
がんばれフィリピン。