現代国際関係における典型的な千日手のひとつ

『民族自治権』という底なし沼へ。


クリミア住民投票、ロシア編入を圧倒的多数で承認 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News
ということでクリミアさんの住民投票もあっさり終わってしまったそうで。ぶっちゃけここまではロシアさんの予定通りだよなぁと。まさかここからあの1930年代のヒトラーさんのズデーデンからの流れをそのまま再現するつもりもないだろうし。後はひたすら現状維持しつつ平和を愛するヨーロッパの人たちが喉元過ぎればなんとやらでまたガスを買ってくれるのを待つだけ、というのがロシア=プーチンさんの基本路線ではあると思いますけども、まぁ実際どうなるかはワカリマセン。

【3月17日 AFP】ウクライナ南部クリミア(Crimea)半島で16日行われたロシア編入の是非を問う住民投票で、地元当局によると開票率50%を超えた段階で95.5%が賛成票を投じ、ロシア編入の承認が確実となった。

住民投票に対しては、実施前から各国政府が非難の声を上げていたが、クリミア半島各地の街頭では、多数の住民たちがロシア国旗を振り、旧ソ連時代の歌を歌って投票結果を祝った。

 親欧米のウクライナ暫定政権と欧米諸国は、今月初めから事実上のロシア軍の支配下となっているクリミアで行われたこの住民投票は「違法」であると主張している。

クリミア住民投票、ロシア編入を圧倒的多数で承認 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News

今回の住民投票と併せて国連安全保障理事会の無効化によって、
国連安保理:クリミア投票無効決議案を否決…露が拒否権 - 毎日新聞
私たちも見慣れた風景が完成した。
つまり、こうして曲がりなりにも住民意思を生み出すことで、民族自治問題からの国家の『国際法上の地位問題』という現代国際関係における未解決問題の山の一部に加えることに成功した。あとは――同様の事例が示す通り――現状が固定されたまま時間だけが過ぎていくだけ。


民族自治権の正統性と、その限界について。
一体誰が、いつ、どこで、どのような形で投票すればそこに正統性があると認められるのか。もちろん欧米の皆様にはその正義が見えているわけですけども、しかしだからといって、そもそもその正義=国際法上の地位に関する見解が世界全体に普及している、なんて絶対に言えないわけで。
結局NATOが全力で介入した「あの」コソボですら、今尚答えが出ていないというのに。
故にこの問題では何もかも棚上げする以外にない。時間の流れが解決してくれるさ、とばかりに放置する。




http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40197
ちなみにこのウクライナとクリミアのお話で愉快なのは、この結末を望んでいるのが必ずしもロシア=プーチンさん「だけ」ではない、という点にあるわけですよね。

 キエフにとって一番マシな道筋は、実際に法律上はそうでなくとも、差し当たりはクリミアが失われたことを受け入れることだ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40197

ここで終わるのならば「まぁ妥協できる範囲だ」というのは、実は危機のエスカレートを望まない大多数の諸外国――私たち日本ですら例外ではない――の事実上の総意でもあったりする。
ウクライナ君ここはちょっとガマンしてくれたまえよ、なんて。
少なくともこの現状というのは『民族自治権』という不毛で答えの出ない議論の中に封印し押し込めてしまえるから。でも仕方ないよね、民族自治権の問題は21世紀になっても尚答えの出せない国際関係上の難題でもあるのだから――と、正当化できなくはなくない。


で、そうなると、前回にも強硬なデモを煽りまくって与野党合意を見事に潰しロシア軍介入を決定づけたウクライナ国内のナショナリストな人たちの動向が鍵を握るのでしょうけども、上記のような「一番マシな道筋」を上から目線で語られると、まぁまた大暴れしちゃう可能性は否定できませんよね。


一体どうなるんでしょうね? がんばれ関係者たち。