合法化メソッド大好きな人びと

イデオロギーと経済利益を混同しては燃え上がるめんどくさい人びと。



アメリカの麻薬問題の根源は闇市場であり、むしろ麻薬を合法化すべきという見解 - GIGAZINE
少なくとも両者が「望んで」行う取引を完全に禁止することは不可能である、ここから「故に〜」と続く、というよくあるお話。

フライダースドーフ氏のような麻薬合法化論者は、麻薬が法律で禁止される限り闇市場に巨大な利益が集まるのは必然的であるとして、禁酒法を見直しアルコールを解禁した過去の歴史にならって、麻薬を合法化した上でしっかり管理する方が、社会全体で見た場合に利益が大きいという見解を採っています。

アメリカの麻薬問題の根源は闇市場であり、むしろ麻薬を合法化すべきという見解 - GIGAZINE

まぁこうしたお話は所謂「取り締まりコスト」という経済的な観点からしばしば語られるお話ではありますよね。商品の非合法化によるデメリットとして語られるのは大きなモノとしては次のようなものがあったりします。

  • 公的保護を受けられないために、各自の契約履行の為の私的手段=殺人や暴力事件の増加。
  • 逮捕と訴追のリスクを「相対的に」下げる為に、より短時間で効果のある強力な商品への移行(禁酒法時代にはよりアルコール度数の高い商品が流行し、また『飲み貯め』しようとして急性中毒も増加した)。
  • 情報の非対称化=顧客たちは闇市場である故に安全で信頼性の高い商品情報にアクセスすることができない。

そして逆に「合法化」することで、上記のデメリットは反転する。個人個人が何に賛成し何に反対するかどうかは別として、社会にとってそうした利益や不利益があることを理解すること自体は、議論していく上でやっぱり重要ではないでしょうか。


まぁアメリカでこういう議論の人気があるのは、やっぱりあの『禁酒法』時代の記憶があったりするからなのでしょうね。あまりにもバカげた社会実験の結末。ついでに言うとアメリカでこうした議論が盛り上がりやすいのは、禁酒法だけでなくあのよりクリティカルな『中絶の是非』の問題もあるんじゃないかと個人的には思っています。中絶の非合法化による手術の失敗例というのは、まぁ大きな社会問題でもあったわけだし。


ともあれ、しかしこのお話で重要なのは「根絶の有無」だけではないのです。最初に書いたようにそれはどこまでいっても個人の欲望による半ば「双方合意の上での取引」である以上、完全に禁止することは不可能であるのです。ただ「法律で禁止される限り闇市場に巨大な利益が集まるのは必然的」だからといって、その取り締まりの努力そのものをやる必要があるか否か、というとやっぱり別の問題であるのです。
問題なのはそうした取り締まりを通じて、どのような社会を目指すべきか、というメッセージを生み出すことでもあるんですよね。少なくともそれを努力や取り組みそのものはまったくの無駄というわけでもない。だからこそ多用な価値観の混在するアメリカにおいて、こうした議論が盛り上がったりするのでしょう。
多くの人がその『利益』を盾に自身の価値観を正当化を図ろうとする。


単純に利益不利益の多寡ではなく、結局のところそのイデオロギーのポジションの問題。まぁそれをこうして経済的メリットで語ろうとすると、判断軸が二種類になって議論がめんどくさくなる理由なのだろうなぁと。