『人災』と『美談』が紙一重に存在する、閉鎖環境下における最高責任者の重要性

だから「船長」を選べとあれほど。


韓国旅客船沈没、船長ら3人を逮捕 船内に3遺体発見 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
ということであちらの沈没事故は『人災』の面が強く出てきたことで、色々とニュースなお話になっているそうで。

【4月19日 AFP】韓国の南部沿岸沖で16日朝に起きた旅客船の沈没事故で、韓国の捜査当局は19日、リ・ジュンソク(Lee Joon-Seok)船長(69)ら乗組員3人を逮捕した。

 この事故では乗船していた476人のうち174人は救助されたが、これまでに29人の死亡が確認され、273人が依然として行方不明になっている。船長は船が沈みつつある中、乗客を船に残して脱出したとして厳しく批判されている。

韓国旅客船沈没、船長ら3人を逮捕 船内に3遺体発見 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

まぁある種テンプレの様な船長としての振る舞いではありますよね。見事に彼はその使命を放棄し大惨事を引き起こした。


この辺の船上での緊急事態時における生存率を分かつ「船長の優秀さ」というのは、ちょうど2年前の日記でも書いたお話でもありまして。
女性や子供が難破船上で助かる為のたった一つのさえたやり方 - maukitiの日記
しばしば女性や子供を優先して助けた「難破船上の騎士道」という美談と、まったく逆の――それこそ今回の事件のような難破船上の「よくある悲劇」について。

結局のところ、上記タイタニックやバーケンヘッドでの事例のように、船長の騎士道精神が優れているかどうかというよりも、混乱を防ぐ為に「銃を持ち出す覚悟」があるかどうか、が重要なのでしょう。秩序さえ保とうという意識さえあれば、現代人である私たちは、おそらく女性や子供を優先する、といった行為を自然にやると思うんですよね。秩序さえ保たれていれば。

そんな、ある種の閉鎖環境下の船上における最高権力者である『船長』の優秀さについて。能力とやる気のある海軍の人たちの多くがそのポジションについて素朴な憧憬を抱くのも無理はない気がします。

女性や子供が難破船上で助かる為のたった一つのさえたやり方 - maukitiの日記

つまり、閉鎖環境でもある船上というのは、特に『最高権威者』である人物の役割が大きく――良くも悪くも――強調される事になる。故にその失敗と成功=生存率を分けるのは、しばしば、船長の優秀さと直結することになる。
飾りではないホンモノの一番えらいひと。
まぁこうしたお話は普段は解りにくい人類社会の構図でもあるのでしょう。多くの権限が分散された現代的組織では、そのトップに立つ人間の優秀さというのは結構軽視されがちではあるものの、しかし本質的には違いはない。もちろんそれを過大視することも、かといって逆に過小視することも正しくなくて、いつだってその最高権威者の決断というのはそれなりに重要な分岐点となる。特にそれが閉鎖環境下における絶対的な権限を持つ『船長』のようなポジションであれば尚更。


平時であれば見逃されるそれも、しかしこうして一度緊急事態に見舞われると、その役割の重要性は途端に増すことになる。まぁ私たちもあの『3・11』で色々と考えさせられたお話ではありますよね。