アメリカが世界を見るとき、世界もまたアメリカを見つめているのだ

相対的な衰退期だからこそ蘇る一極世界の基本原理。



ポーゼン:アメリカはイラクで何もするな1 : 地政学を英国で学んだ
ポーゼン:アメリカはイラクで何もするな2 : 地政学を英国で学んだ
まぁ概ね同意できるお話ではあるかなぁと。
時事ドットコム:イラク政策、国民の過半数反対=空爆の是非も分かれる−米調査
前回選挙によって国民の意識は明白であるし、空爆支持もよくいって五分五分でしかない。そして身も蓋もない言い方をすれば、イラクで内戦が始まろうと「国益」を考えれば無視した方が合理的である、なんて。
ひどいお話ではありますが、それって私たち日本のようなただ見ているだけな国と考えていることは、ほとんど変わりませんよね。イラクがどうなろうと(直接に自身の利益が脅かされない限り)知ったことではないのでどうでもいい。とても悲しいけど、勝手に殺しあってくれ。
なぜ、アメリカだけが私たちと同じように振る舞ってはないけないのか、と言われると実際には反論は難しいよなぁと。それこそ覇権国家として傲慢に振る舞うことに対しては非難する一方で、同じことをしても非難するのはあんまりフェアではない。
ただ、それでも、アメリカ以外の私たちはそんなアメリカさんの動向を黙ってみているわけにはいかないのがこのお話の難しい所ではありますよね。昔からよく言われるように、アメリカは強すぎる故に動いても動かなくても世界は振り回されることになる。




実際、私たち自身が薄々感じているように、シリアで16万人死のうが、イラクでどちらの宗派が勝利しようが、ウクライナがクリミアを奪われようが、ベトナムやフィリピンが中国によって脅迫されようが、その問題自体は遠く離れた国々とっては基本的にはどうでもいいのです。もちろんこのグローバルな世界において資源価格などによる経済的影響として回ってくることもあるかもしれない、でもそれってやっぱり人道や平和とはまったく違う考え方でもあるわけで。
私たち日本人にとって最後の南シナ海の問題はかなり他人事ではないものの、おそらくヨーロッパの人たちにとってはかなりどうでもいいと思っているでしょう。逆に私たちにとって遠く離れたイラクやシリアあるいはウクライナがどうなろうと基本的にはどうでもいい――不満はあるけど自分から何か行動するほどの問題ではない、という他人事感は概ね正しい現状認識だと言えるのです。
常日頃に平和を愛するとか人権がどうのこうのとか世界市民だのと言っていますけども、その善意が届くのは自分の周囲でしかない。故に国民の代表である政府にもそうであれと望む。まぁ別にそれを良いとも悪いとも言うつもりはありませんけど。


ともあれ、それなのに何故、上記のような遠く離れた場所で起きる危機が私たちに関わってくるのかというと、そりゃあ身も蓋もなくアメリカが居るからなんですよね。その無関心さは危機の当事国には適用されても、しかし、そこでアメリカがどう振る舞ったのか、という事実に対してはどうやっても他人事ではいられない。
だって21世紀現在の国際関係というのは尚も――徐々に失われつつあるとはいえ――アメリカという国が唯一の超大国でもあるから。
だからイラク内戦の問題はイラクだけの問題ではないし、同様にウクライナやシリアや東・南シナ海での問題もそれぞれの国家の問題と言うだけではないのです。例えイラクの問題が解決しようと、しかしそこで超大国であるアメリカがどう振る舞ったのか、という問題は残り続ける。だって私たちは望むと望まざると現代世界においてアメリカを無視するわけにはいかないのだから。
かくして世界中の問題を通じて、ほとんどすべてのプレイヤーはアメリカの動きを注視しないわけにはいかない。その意味ではよくある反米陰謀論者のような人たちの世界観はそこまで間違っているわけでもなかったりするかもしれない。「すべてはアメリカの陰謀である」はともかく、しかしすべての大問題は結局「アメリカがどう動いたか」こそが重要なのです。だって彼らはスーパーパワーなのだから。


子ブッシュさんの単独行動主義はそうした他者の目を気にしなかったからこそ世界中から批判が集中した。ではオバマさんは?


それでも、そんな彼らもずば抜けた国力はともかくとしても、やっぱりその意思決定のプロセスは他国のそれと大きく変わることはない。その平凡な民意と強大すぎるパワー、そのギャップこそが最大の問題なんですよね。

●最後に、われわれがアメリカ国民の意見としてわかるのは、オバマ大統領が選ばれた時の民意はイラクから撤退することにあったということだ。彼はイラク撤退を公約して大統領になったのだ。

●「抑制」を推進する人々の議論は、イラクで新たに軍事介入をするのは不要であり、賢明でもないというものだが、その他にも、われわれは「これが民主的な形で表明されたアメリカ国民の考えに沿ったものかどうか」という点を考慮しなければならない。

ポーゼン:アメリカはイラクで何もするな2 : 地政学を英国で学んだ

彼らは当然の利己的な考え方として、そのように合理的に考える。でもそんなアメリカにとっても当然の振る舞いを、シリアやイラクウクライナ南シナ海を同時に見る私たちは戦々恐々と見つめることになる。
一つ一つの問題自体はどうだっていい、アメリカはどのように動き、その行動は自分たちにどのように影響するのか?


まだもう少しだけ続く、素晴らしき一極世界の基本原理について。