偏執的でいることができるだけの自由を得た現代中国

そんな偏執さこそが独裁者を長生きさせる。


カラー革命を不思議なほど怖がる中国:JBpress(日本ビジネスプレス)
まぁ今更何言ってるんだ感のある中国さんちの「国内引き締め」のお話ですよね。まぁよりぶっちゃけるとそれってどう見ても「政治的弾圧」でしかなくて、別に日本に限った話ではなく、ヨーロッパなど商売相手の人たちはその辺のことは華麗にスルーしているからこそ上記のような感想が出てくるのであろうし、それってとっても愉快だなって思いますけど。

 外の世界から見ると、中国の政治指導者たちの不安は、過剰で、偏執的にさえ見える。だが、有名な(西側の)言い回しにあるように、「パラノイドだけが生き残る」のだ。

カラー革命を不思議なほど怖がる中国:JBpress(日本ビジネスプレス)

でもまぁそうした中国さんちのやり方=政治弾圧が単純に間違っているのかというと、やっぱりそうではない。もちろん私たちの愛する(はずの)リベラルな政治観からすれば絶対に間違っていて、それはまぁ議論の余地はないでしょう。
――しかし、それでも、歴史を見る限り彼らの権力維持という面での手法はそこまで間違っていないし、むしろそれは『独裁者』として振る舞いとしては最適解に近い。
『デモ』が持つ二つの顔 - maukitiの日記
ずっとうちの日記でも書いてきているように、各国で起きた民主化運動の歴史を見ると「恐れられる」独裁者こそが民主化運動によって倒されてきたわけではなく、むしろ倒されてきたのは、そのほとんどが「優しい」独裁者だったわけですよ。マキャベリ先生が仰っていたように、愛されるよりも愛したいマジで――じゃなくて愛されるよりも恐れられた方が独裁権力を維持する上でマシなのです。


市民に対し(結社や政党やデモや選挙など)政治的自由を「ある程度」許して来たり、あるいは市民に様々な自由を許すことが、結果として古今東西の独裁者たちを死に至らしめてきた。
逆説的に言えば、そうしたことを徹底的に許さない独裁者こそが概ね長生きしてきたわけで。
その身近な成功例が私たちも良く知るあの北朝鮮の金さん一族でしょう。彼らの『地上の楽園(笑)』は、偏執的なまでの弾圧体制によってこそ内部崩壊を免れてきた。何故北朝鮮の人々はあそこまで虐げられ追いつめられていながらあの独裁者を倒さないのかって、そりゃ身も蓋もなく、そうした運動は徹底的に一切の容赦なく排除されてきたからでしかない。私たちから既にネタ扱いされている彼らがしばしば口にする「慈悲のない攻撃」声明ってあれ国内的には文字通りの真実でもあるんですよね。



これまで西側諸国は、アジアでもアフリカでも中東でも、そうした独裁者に対して硬軟織り交ぜた経済カードや軍事カードを盾にして陰に陽に圧力を掛けることで独裁者を徐々に骨抜きにし、上記「優しい」独裁者を生んできたわけで。その意味で言えば彼らのやっている民主化圧力というのはそこまで無駄ではないでしょう。ただ口で言うのではなく、まさに現実利益とバーターにした彼らの地道な圧力こそが、確かに世界を変えてきた。
その最近の典型例が、ミーハーな熱狂としてはもう忘れ去られつつある、あの『アラブの春』を産んだ長期的要因の一つでもあったわけで。エジプトを筆頭にチュニジアでもシリアでも、善意溢れる欧米諸国が独裁者に少しづつ圧力を掛けることで彼らの政治権力基盤は徐々に液状化していき、ついに突発的な震動によって独裁体制は一気に崩壊した。
いやまぁその後の展開と言えば、まぁご覧の有様なんですけど。その是非はともかくとして、しかしそうした「国民に少しでも優しくあれ」という圧力はそこそこ効果があったといっていい。


ともあれ、話を現代中国に戻すと、彼らはその意味でその独裁体制の生存戦略に適切なパワーを手に入れているんですよね。経済的にも軍事的な意味でも、最早彼らは国外からやいやい言われる圧力をかなりの程度まで跳ね返せるほどの国力を手に入れている。
中国高官の息子 JPモルガン・チェースに“史上最悪のコネ入社”WSJ報じる - 政治・社会 - ZAKZAK
どころかむしろ、最初に書いたように経済的利益によって中国の国内弾圧に半ば沈黙する私たち。独裁者がこの先生きのこる為には偏執的になるしかないものの、それはやっぱり簡単ではない。北朝鮮がやっているように全ての国外からの支援を拒否することでそれを維持するか、あるいはそれを黙らせるだけのパワー持つしかない。そして現代中国は、それだけのパワーを持っている。
まぁ彼らが戦後以降ずっと求めてきた悲願でもありますよね。他国から口出しされない自由。『大国』とはそういうものなのだと。


かくして今の中国政府は「堂々と」国内引き締め=政治弾圧に走ることができる。
偏執的でいることができる自由を得た現代中国の独裁者たち。


みなさんはいかがお考えでしょうか?